尾形仂

尾形仂：近世文学、特に俳諧研究の第一人者

尾形仂（1920年1月28日-2009年3月26日）は、日本の国文学を代表する学者の一人です。成城大学名誉教授として、近世文学、とりわけ俳諧の研究に長年尽力しました。その業績は、日本の国文学研究に多大な影響を与え続けています。

学位と初期の経歴

東京府東京市に生まれた尾形は、東京高等師範学校文科第二部、そして東京文理科大学文学科国語国文学専攻を卒業しました。在学中は、能勢朝次、山岸徳平両氏に師事し、著名な国文学者である潁原退蔵氏の指導も受けました。学業に励む傍ら、海軍予備学生として土浦海軍航空隊に入隊するなど、激動の時代を経験しました。第二次世界大戦終戦時には、東京大空襲により家族を失うという大きな悲劇に見舞われています。

戦後の研究活動と大学での教職

戦後、会社勤めを経て、1955年に東京教育大学文学部助教授に就任。1975年には教授に昇格しました。1977年には東京教育大学閉学に伴い退官しましたが、その後、成城大学教授に迎えられ、1990年まで教鞭を執り、名誉教授となりました。

研究内容と主な業績

尾形は、近世文学、特に俳諧を専門分野として研究活動を行いました。その研究は、松尾芭蕉や与謝蕪村といった俳諧の巨匠たちの作品を深く掘り下げ、新たな解釈を提示するものでした。特に蕪村研究においては、代表的な著書である『蕪村自筆句帳』が、1974年に文部科学大臣賞、1975年には読売文学賞を受賞するなど高く評価されました。

また、1967年には『おくのほそ道』をはじめ、多くの著作を世に送り出しました。晩年まで精力的に研究活動を行い、没する直前の2008年11月には、岳父である潁原退蔵が作成した語彙カードを弟子たちと共に編集した『江戸時代語辞典』（角川学芸出版）を刊行。この辞典は、2009年11月に第63回毎日出版文化賞を受賞しました。さらに、講談社の『蕪村全集』（全9巻）の監修も務め、日本の国文学研究に多大な貢献を果たしました。

その他の活動と遺産

尾形は、数多くの著書や編著書、論文を発表し、後進の育成にも尽力しました。主な著書には、『座の文学』『芭蕉の時代』（大岡信氏との共著）、『蕪村俳句集』、その他多くの注釈書、共著、編著書が挙げられます。これらの著作は、現在でも広く読まれ、研究に活用されています。

東京都福生市の福生市郷土資料室には、尾形と岳父である潁原退蔵のコレクションが寄贈され、2013年には「特別展示：新聞錦絵 潁原退蔵・尾形仂コレクション」展が開催されました。これらの資料は、日本の近世文学研究にとって貴重な資料となっています。

家庭

尾形は、国文学者である潁原退蔵の次女と結婚しました。これは、潁原の死後、お悔やみの書簡を出したことがきっかけだったと伝えられています。

尾形仂の生涯は、学問への飽くなき探究心と、日本の国文学発展への貢献を示すものでした。彼の研究と著作は、これからも多くの研究者や愛書家たちにインスピレーションを与え続けるでしょう。

もう一度検索