澄川伸一

プロダクトデザイナー 澄川 伸一

澄川 伸一（すみかわ しんいち）は、1962年に東京都新宿区で誕生した日本のプロダクトデザイナーです。現在、大阪芸術大学デザイン学科の教授として教鞭を執るとともに、自身のデザイン事務所を主宰し、多岐にわたる分野でデザイン活動を展開しています。

経歴

澄川氏は、1984年に千葉大学工学部工業意匠学科を卒業しました。同年、ソニーに入社し、ソニーデザインセンターおよびソニーアメリカデザインセンターにてデザイナーとしてのキャリアを積みました。ソニーでの経験を経て、1992年に独立し、澄川伸一デザイン事務所を設立しました。

デザイン哲学とアプローチ

彼のデザインにおける特徴の一つは、高度なデジタル技術の活用です。特に、三次元CADや3Dプリンターといったツールを駆使し、人間工学に基づいた流麗な曲面を持つプロダクトの設計を得意としています。また、これまでに57ヶ国を旅した経験が、その自由闊達なデザイン発想の源となっています。デザインにあたっては、「安心感」と「緊張感」という対照的な感覚を共存させることを重視しており、作品を通じて人々に新たな感情や気づきをもたらすことを目指しています。常にネガティブな要素を排除し、ポジティブな側面を引き出すデザインを追求しています。

代表的な仕事

澄川氏の仕事の中でも特に注目されるのが、国際的なスポーツイベントで使用された公式卓球台のデザインです。2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、公式卓球台のデザインを担当しました。リオ大会で使用された卓球台には、東日本大震災で被災した岩手県宮古市産の木材が用いられており、デザインに社会的な意義を込める試みも行っています。

受賞歴と主な作品

澄川氏は、これまでに数々の権威あるデザイン賞を受賞しています。主なものとして、2005年の富山デザインコンペでのグランプリ、2012年のドイツ・レッド・ドット・デザイン賞、2018年のドイツiFデザイン賞などがあります。

デザインを手がけた作品は幅広く、オリンピック公式卓球台の他にも、以下のような作品があります。

コクヨ ハサミ〈エアロフィットシリーズ〉
Mamiya ZD 中判デジタル一眼レフカメラ（ドイツミュンヘン機械博物館永久展示品）
竹中製作所 AQUARIUM #003
TOTO BEACH
* SONY AM STEREO RADIO SRF-M100, WALKMAN WM-SXF33

これらの作品の中には、グッドデザイン賞やJIDAデザインミュージアムコレクションへの選定など、高く評価されたものが多数含まれます。

その他の活動と人物像

デザイン実務や教育活動の傍ら、澄川氏は13年間にわたりグッドデザイン賞の審査員を務めるなど、デザイン振興にも貢献しています。また、専門分野に関する執筆活動も行っており、『デザインニュース』や『日本機械学会誌』などに寄稿しています。テレビ番組「ニューデザインパラダイス」や「デザイントークスプラス」などにも出演し、デザインの魅力を伝えています。個展も開催しており、「精緻の一滴」（2003年、六本木）や「曲がるかたちの秘密」（2010年、蔵前）でそのデザイン世界を紹介しました。

多才な人物としても知られ、趣味はフルマラソンです。過去には複数の大会に参加し、完走の記録を残しています。また、サキソフォーン、ギター、ピアノといった楽器の演奏も嗜むなど、豊かな感性を持つデザイナーです。

澄川伸一は、先進技術、国際的な視点、そして独自の哲学を融合させ、機能的かつ情感豊かなプロダクトを創造し続けています。

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