澤村修治

澤村 修治（さわむら しゅうじ）氏は、1960年に東京都で生まれた日本の編集者であり、人文学者です。戸籍上の本名は横手 拓治（よこて たくじ）といいます。現在は松蔭大学の教授として教壇に立つ一方、思想誌『ひらく』の編集委員長も務めるなど、幅広い活動を展開しています。

氏のキャリアは、千葉大学人文学部を卒業後、編集者としての道を歩み始めたことに始まります。編集の技術や精神については、出版業界の重鎮である牧野 武朗氏から深い薫陶を受けました。長きにわたり勤めた株式会社中央公論社および株式会社中央公論新社では、実に37年間もの間、編集者として数々の書籍を生み出してきました。この期間、氏が特に重要な役割を果たしたのが、中公新書ラクレと中公選書という二つの叢書の立ち上げです。編集長としてこれらの新シリーズの創刊を主導し、それぞれの特色を活かした企画や編集方針を確立することで、多くの読者に支持される基盤を築きました。

中央公論新社を定年退社した後は、その豊かな経験と知見を教育の場に還元しています。まず淑徳大学の教授に就任し、2025年に同大学を定年により退いた後、現在の所属である松蔭大学の教授に着任しました。大学では、出版文化や人文学、あるいは氏自身の専門分野に関する講義や研究指導を行っています。

研究活動にも熱心に取り組んでおり、2022年には長年の研究成果として「唐木順三 あめつちとともに」に関する論文をまとめ、千葉大学より博士（文学）の学位を取得しました。この研究は、日本の文学者・思想家である唐木順三の仕事と生涯に深く迫るものであり、その成果は同名の書籍としても刊行され、学術的な評価も得ています。

編集者として培った幅広い視野と、人文学者としての深い探求心を活かし、執筆活動も精力的に行っています。文学、歴史、思想、あるいは出版文化といった多岐にわたるテーマで著作を発表しており、その内容はアカデミックな考察から一般向けの論考まで多岐にわたります。

主な著書には、以下のような作品があります。

『徳田秋聲、仮装と成熟』（2010年）
『宮澤賢治と幻の恋人 澤田キヌを追って』（2010年）
『悲傷の追想 「コギト」編集発行人、肥下恒夫の生涯』（2012年）
『日本のナイチンゲール従軍看護婦の近代史』（2013年）
『天皇のリゾート 御用邸をめぐる近代史』（2014年）
『敗戦日本と浪曼派の態度』（2015年）
『唐木順三－あめつちとともに』（2017年）
『西郷隆盛－滅びの美学』（2017年）
『幕末青春伝 西郷隆盛―時代をかけぬけた男』（2017年）
『ベストセラー全史 【現代篇】』（2019年）
『ベストセラー全史 【近代篇】』（2019年）
『日本マンガ全史 「鳥獣戯画」から「鬼滅の刃」まで』（2020年）

また、自身の編集ノウハウを生かした編著や、本名の横手拓治名義での編訳書なども手掛けています。

『宮澤賢治のことば ほんとうの幸（さいわい）をさがしに』（編著、2012年）
『八木重吉のことば こころよ、では行っておいで』（編著、2013年）
『宮澤賢治、山の人生』（編著、2016年）
ラッセル・カーク『幽霊のはなし』（編訳、横手拓治名義、2024年）
* 垣見隆著、手塚和彰ほか共同編著『地下鉄サリン事件はなぜ防げなかったのか ～元警察庁刑事局長 30年後の証言』（共同編書、2025年）

さらに、メディアでの活動も行っています。思想誌『表現者』では、「記憶の王国」および「ゆかりの径（こみち）」と題した連載を執筆しています。テレビでは、MXテレビの特別シリーズ「日本人とはそも何者ぞ」（2017年6月～2018年1月放送、全20回）に出演し、西部邁氏、浜崎洋介氏とともに日本のアイデンティティについて深く議論を交わしました。この番組での対談内容は後に書籍化もされています。

澤村修治氏は、長年の編集者としての経験、人文学者としての探究心、そして教育者としての情熱をもって、多角的に出版文化や人文学に貢献し続けています。その活動は、執筆、編集、研究、教育、メディア出演など、様々な形で社会に知的刺激を提供しています。

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