澤村田之助

澤村田之助（さわむら たのすけ）

「澤村田之助」は、歌舞伎界において代々受け継がれる由緒ある名跡です。多くの俳優がこの名を名乗ることで、澤村家の芸の伝統と歴史を繋いできました。屋号は「紀伊國屋」、定紋には「釻菊（かんぎく）」、そして替紋には「波に千鳥（なみに ちどり）」を用いています。

この名跡を継承した主な歴代俳優は以下の通りです。

初代 澤村田之助

二代目澤村宗十郎の二男として、宝暦3年（1753年）に生まれました。後に三代目澤村宗十郎を襲名し、寛政13年（1801年）にその生涯を終えています。初代は、澤村家にとって重要な位置を占める名跡の一つとして「田之助」を確立した人物と言えるでしょう。

二代目 澤村田之助

初代澤村田之助の三男として、天明8年（1788年）に生まれました。はじめ初代澤村鐵之助を名乗っていましたが、後に二代目澤村田之助を襲名しました。その活躍は文化14年（1817年）に亡くなるまでの短い期間でしたが、父から名跡を受け継ぎ、その名を次代へと繋げました。

三代目 澤村田之助

五代目澤村宗十郎の二男として、弘化2年（1845年）に生まれました。初めは初代澤村由次郎という名を名乗っていましたが、安政5年（1858年）には三代目澤村田之助を襲名しています。惜しくも明治11年（1878年）に33歳の若さで亡くなりましたが、幕末から明治初頭にかけて活躍した俳優として記憶されています。

四代目 澤村田之助

三代目澤村田之助の門下に入り、後に養子となった人物です。安政4年（1857年）生まれ。初め澤村百之助として舞台に立ちましたが、明治11年（1878年）に師である三代目が亡くなった後、その名跡を継ぎ四代目澤村田之助を襲名しました。明治32年（1899年）に亡くなるまで、澤村家の芸を守り続けました。

五代目 澤村田之助

七代目澤村宗十郎の二男として、明治35年（1902年）に生まれました。初めは三代目澤村由次郎として舞台に立ち、大正9年（1920年）に五代目澤村田之助を襲名しました。戦前から戦後にかけて長く活躍し、後に澤村曙山と名を改めました。昭和43年（1968年）に死去するまで、歌舞伎界に貢献しました。

六代目 澤村田之助

五代目澤村田之助の長男として、昭和7年（1932年）に生まれました。初め四代目澤村由次郎を名乗り、昭和36年（1961年）には六代目澤村田之助を襲名しました。長きにわたり女形として活躍し、人間国宝にも認定されています。令和4年（2022年）に亡くなるまで、現代の歌舞伎界を代表する存在として多くの観客に愛されました。

このように、「澤村田之助」の名跡は、代々の澤村家の俳優たちによって大切に受け継がれ、それぞれがその時代において芸を磨き、歌舞伎の伝統を守り発展させてきました。屋号や紋とともに、この名は澤村宗十郎家に連なる俳優たちの誇りであり、歴史の証となっています。

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