澤登翠

澤登翠(さわとみどり)は、日本の無声映画を語る上で欠かすことのできない、世界的に活躍する活動弁士です。東京都出身の彼女は、法政大学文学部哲学科卒業後、1972年に松田春翠に師事し、その技を磨きました。

日本の伝統芸能である活弁を、国内にとどまらず、フランス、アメリカ合衆国など世界へと羽ばたかせました。単なる映画の解説にとどまらず、その豊かな表現力と情熱的な語り口は、観客を無声映画の世界へと深く引き込み、作品の魅力を最大限に引き出しました。彼女の活躍は、日本の活弁の存在を世界に知らしめる上で大きな役割を果たしました。

澤登翠の国外での活動は目覚ましく、1988年のフランス・アヴィニョン映画祭での阪東妻三郎主演作品の弁士を務めたのを皮切りに、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンパウロといった大都市での公演や、ローマのポルデノーネ無声映画祭、ベルギーのアントウェルペン映画祭など、数々の国際的な映画祭に参加しました。オランダ・ロッテルダムの『ヴォイス・フェスティバル』、ドイツ・オーバーハウゼンの短篇映画祭、フランス・エヴルーの『映像演劇祭』、シカゴ国際映画祭、ソウル国際女性映画祭、サンフランシスコ無声映画祭など、世界中の映画祭でその卓越した弁士としての技を披露し、絶賛を浴びました。

澤登翠は、ただ公演を行うだけでなく、後進の育成にも力を注いでいます。彼女は澤登翠一門を率い、現代の活弁士の育成に尽力し、活弁という伝統芸能の継承と発展に貢献しています。その努力は、活弁の活躍の場を広げることに繋がっており、日本の文化遺産の保存と発展に大きく寄与しています。

その功績は高く評価され、数々の賞を受賞しています。主な受賞歴には、1990年の日本映画ペンクラブ賞、1995年の日本映画批評家大賞 ゴールデングローリー賞、2000年の第24回山路ふみ子映画賞 山路ふみ子文化財団特別賞、2002年の芸術祭賞優秀賞(演芸部門)「澤登翠活弁30周年記念公演“THE活弁”」、そして2013年の文化庁映画賞(映画功労部門)などがあります。これらの受賞歴は、彼女の活動が日本の映画界、ひいては文化界全体に与えた大きな影響を示しています。

2002年には、『活動弁士 世界を駆ける』を出版し、自身の経験や活弁への熱い思いを綴っています。この著書は、活弁という文化への理解を深める上で貴重な資料となっています。

彼女は、読売テレビのワイドショー番組『ワイドショー今』などにも出演し、活弁の魅力を広く伝える活動も積極的に行っています。

澤登翠の活動は、単に無声映画を解説するだけでなく、日本の伝統芸能である活弁を世界に伝え、その発展に貢献する、まさに文化の伝道師としての役割を果たしています。彼女の功績は、日本の文化遺産の保護と発展に大きく寄与し、今後も活弁界に大きな影響を与え続けることでしょう。

もう一度検索