オーバーハウゼン

ドイツの工業都市オーバーハウゼン：鉄から文化へ

ノルトライン＝ヴェストファーレン州に位置するオーバーハウゼンは、人口約21万人の都市です。ルール地方という工業地帯の中心部にあり、かつては製鉄業や石炭採掘で繁栄を極めました。周囲にはエッセン、ミュールハイム・アン・デア・ルール、デュースブルクといった都市が隣接し、ルール大都市圏を形成する重要な一角を担っています。

重工業都市からの変貌

1758年、聖アントニー製鉄所の建設が、オーバーハウゼンの発展の始まりでした。その後、次々と製鉄所が建設され、ラインラント地域の工業化を牽引する存在となります。1846年にはオーバーハウゼン駅が開設され、鉄道網の発達も相まって、石炭採掘と製鉄業はさらに発展し、人口は急増しました。周辺地域との合併を経て、1929年に現在のオーバーハウゼン市が誕生しました。

日本の近代製鉄業との深いつながり

オーバーハウゼンの製鉄業の中核を担ったのが、グーテホフヌングスヒュッテ（GHH）社です。GHH社は、日本の近代製鉄業において重要な役割を果たしました。日清戦争後の1890年代、日本は鋼のほとんどを輸入に頼っており、賠償金を用いて近代的な製鉄所建設を計画しました。海外鉄鋼事情調査団が欧米を視察した結果、GHH社が製鉄所の設計を担当することとなり、多くの技術者がGHH社に派遣され、技術指導を受けました。

その結果、北九州に建設されたのが官営製鐵所、後の八幡製鐵所（現在の新日本製鐵八幡製鐵所）です。設備拡張のためにもGHH社への技術者派遣が行われ、日本の近代製鉄業の発展に大きく貢献しました。GHH社自身も戦後復興に貢献しましたが、産業構造の変化により、1990年前後に操業を停止しました。

文化都市としての発展

現在、オーバーハウゼンは文化都市として新たな魅力を放っています。大規模ショッピングセンター「ツェントロ」は、ショッピングとレジャーを融合させたドイツ初の施設で、新都心「ノイエ・ミッテ」の中核をなしています。このノイエ・ミッテは、かつてGHH社の溶鉱炉が置かれ、多くの技術者たちが働いていた場所です。ツェントロのそばには、GHH社中央倉庫ビル（現在はライン工業博物館の資料館）が残り、建築史的にも貴重な存在となっています。

1954年から開催されている「オーバーハウゼン国際短編映画祭」は、ドイツ映画界に大きな影響を与えました。1962年には、若手映画作家たちが「オーバーハウゼン・マニフェスト」を発表し、「ニュー・ジャーマン・シネマ」という新たな映画運動の端緒となりました。

スポーツと国際交流

サッカークラブ「ロートヴァイス・オーバーハウゼン」や、ドイツ最大規模のプロレス団体「ウエストサイド・エクストリーム・レスリング」の本拠地でもあります。また、イギリスのミドルズブラ、ウクライナのザポリージャなど、複数の都市と姉妹都市提携を結び、国際交流にも力を入れています。

オーバーハウゼンは、重工業都市としての歴史と、文化都市としての新たな発展を両立させた、魅力的な都市と言えるでしょう。

もう一度検索