澳門軽軌鉄路

マカオ軽軌鉄路（Macau Light Rapid Transit）

マカオ軽軌鉄路（LRT）は、マカオ特別行政区における唯一の鉄道システムで、新交通システムとして位置づけられています。マカオでは、長らく鉄道輸送が未整備でしたが、慢性的な交通渋滞を解消し、公共交通の定時性を向上させるために導入されました。日本のメディアでは、マカオLRTとも呼ばれています。

建設の背景

マカオでは、以前から地下鉄などの鉄道輸送が検討されてきましたが、具体的な計画には至っていませんでした。公共交通はバスとタクシーに依存しており、道路の交通渋滞による遅延が課題でした。そこで、公共交通機関の定時性を改善するため、軽軌鉄路計画が立案されました。計画の主体はマカオ特別行政区政府運輸基建弁公室です。

2002年には、マカオ政府が香港MTRに市内交通の研究を委託しました。当初は、マカオ線、タイパ線、西北線の3区間に分けて計画が進められましたが、車両基地の用地が確保できるタイパ線から着工されました。その後、マカオ半島部の計画は延期されています。

沿革

2010年: 三菱重工業が、新交通システム「クリスタルムーバー」の採用を決定。
2018年: 路線の運営と管理が港鉄軌道営運 (澳門) に委託されました。
2019年: LRT事業はマカオ政府が100%出資する澳門軽軌股份有限公司に移管。
2019年12月10日: 最初の路線となる氹仔線の海洋駅 - 氹仔碼頭駅間が開業。
2021年: 横琴線と石排湾線の工事が着手。高圧ケーブルの不具合により氹仔線が一時運休。
2023年10月20日: 東線の建設が開始。
2023年12月8日: 媽閣駅 - 海洋駅間が延伸し、氹仔線が全線開通。
2024年11月1日: 石排湾線が開業。
2024年12月2日: 横琴線が開業。

将来計画

東線は2028年の完成を目指し建設中です。当初計画されていたマカオ半島線は、現時点では具体的な建設計画がありません。そのため、中国本土との玄関口である関閘からタイパ島への輸送は、東線が先行する見込みです。

マカオ半島線の建設については、線形問題や建設費、用地買収問題から大きな論争があり、東線建設後は、外港碼頭から関閘までの区間は中止される可能性が高いです。この場合、港澳珠大橋線に延伸し、東線との乗り換えで対応する予定です。また、タイパ島北縁の埋立地を横断する、タイパ北線の建設も議論されています。

車両・設備・ダイヤ

車両
「浜海巡航 (Ocean Cruiser)」と名付けられた2両編成の無人運転車両。
ゴムタイヤで走行。
2編成連結が可能。

駅
高架駅は採光と通風を考慮した設計。
エレベーター、視覚障害者誘導チャイムなどのバリアフリー設計。
安全のためのホームドアを設置。
主要駅には、他の公共交通機関との乗り換え設備を整備。

運行
運行間隔は7.5 - 10分。
運行時間は6時30分から23時15分（平日）、23時59分（土休日）。
最高輸送人員は当初約8000人/時、順次14,100人/時まで引き上げる予定。
ICカード「軽軌通」の利用で通常運賃の半額。澳門通も利用可能。

課題

高架橋建設による景観問題。
経由地がカジノ所在地中心で、市民生活での利便性との乖離。
現在は氹仔島側にしか開通しておらず、旧市街地となるマカオ半島側では媽閣駅のみ開業。

路線

氹仔線
全長12.5km、所要時間27分
2019年12月10日：海洋駅 - 氹仔碼頭駅間開業
2023年12月8日：媽閣駅 - 海洋駅間開業

石排湾線
全長1.6km、2024年11月1日開業

横琴線
全長2.2km、2024年12月2日開業

建設中路線
東線：全長7.7km、2028年完成予定

参考資料

澳門輕軌股份有限公司
港鉄軌道営運（澳門）
軽軌 - マカオ特別行政区政府 交通事務局
* 澳門軽軌系統 - マカオ特別行政区政府 公共建設局

マカオ軽軌鉄路は、マカオの交通を大きく変えるインフラとして、今後の発展が期待されています。

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