激突!

『激突!』（Duel）

概要

『激突!』は、1971年に制作されたアメリカのテレビ映画で、スティーヴン・スピルバーグが監督を務めました。本作は、デニス・ウィーバーが演じるトラベリングセールスマンが、追い抜いたトレーラーから命を狙われる様子を描いています。原作はリチャード・マシスンの短編小説『Duel』で、マシスン自身が脚本も手掛けています。ユニバーサル・ピクチャーズによって配信され、1973年にはアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞するなど、高い評価を得ました。また、日本では1973年1月に公開されました。

ストーリー

物語は、デイヴィッド・マンという営業マンが商談のために車でカリフォルニアへ向かうところから始まります。彼はある日の運転中、低速で走行していた大型トレーラーを追い越しましたが、その後、トレーラーの運転手から執拗に追跡され始めます。最初は振り切ったように思えたマンでしたが、トレーラーは何度もその姿を現し、次第に彼に対する危険度が増していきます。

トレーラーは、マンを列車の進行中に踏切に押し込もうとしたり、通報を試みるマンを電話ボックスごと跳ね飛ばそうとするなど、明らかに殺意を持って追いかけてきます。マンは、逃げるために峠道へと進むものの、出発前にガソリンスタンドで指摘されたラジエーターホースの劣化が影響し、峠道の上り坂でオーバーヒートしてしまいます。やっとの思いで峠の頂上に辿りついたマンでしたが、運転ミスで岩に衝突し、車はしばらく動かなくなってしまいました。

しかし、逃げ切ることが難しいことを理解したマンは、ついにトレーラーとの決闘を決意します。彼はトレーラーを崖へ誘い込み、車をUターンさせトレーラーに向かって走り出します。マンは衝突の直前に車から飛び降り、トレーラーの運転手は炎と煙で視界が奪われた結果、マンが突っ込んできたと勘違いし、彼の車もろとも崖に進むことになります。崖から二台の車が転落する音は、まるで咆哮のように響き渡り、マンはその光景を見つめながら、決闘から生き残ったことを喜びながらも、茫然自失の表情を浮かべます。

登場人物

• - デイヴィッド・マン: 物語の主人公で、サングラスをかけた営業マン。大型トレーラーに命を狙われ、逃げ続けるも最終的には対決を決意する。
• - トレーラーの運転手（ケラー）: マンを執拗に狙うトレーラーの運転手。慢性的に他のドライバーを襲う危険な人物として描かれており、その正体は物語の中で一切明かされない。

作品の背景

本作は、スティーヴン・スピルバーグが名を知られることとなるきっかけとなった作品で、監督としての才能を証明するものとなりました。作品の設定や演出には、後のホラー映画『ジョーズ』にも影響を与えた要素が見られます。特に、主人公に迫るトレーラーの描写は、恐ろしい怪物のように描かれ、その緊張感は見る者を引き込む力があります。

制作と撮影

撮影はわずか16日間で行われ、迅速な制作のために絵コンテではなく、手書きの地図を使って撮影ポイントを設定しました。多くの撮影がカリフォルニア州の実在する地点で行われており、そのリアリティが視聴者を惹きつけます。特に、峠道の迫力あるシーンは、視覚的な印象を強めるための重要な要素となっています。

影響とレガシー

本作は、後のカーチェイス映画に大きな影響を与えました。同テーマの作品が次々と製作され、『ブレーキ・ダウン』や『ノーウェイ・アップ』などの作品にそのスタイルが受け継がれています。特にトレーラーと車の追跡シーンは、多くの作品に模倣されています。

結論

『激突!』は、シンプルなストーリーながらも、緊張感あふれる演出とスピルバーグの才能によって、観る者に深い印象を残す作品となっています。エンターテインメントとしてだけではなく、映画史における重要な位置を持つこの映画は、カーチェイスジャンルの先駆者としての役割を果たし続けています。

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