濱田啓介

濱田啓介：近世小説研究の第一人者

濱田啓介（1930年8月11日-2021年9月22日）は、日本の近世文学、とりわけ近世小説研究において卓越した業績を残した国文学者です。京都大学名誉教授の肩書きを持ち、その研究活動は日本の文学史研究に多大な貢献を果たしました。

東京に生まれた濱田氏は、京都大学文学部を卒業後、大阪府立夕陽丘高等学校、北野高等学校で教鞭を執り、その後鹿児島大学を経て、1977年に京都大学教養部助教授に就任。教授を経て、1994年には京都大学名誉教授となりました。同年から2001年までは花園大学文学部教授を務めました。

濱田氏の専門は日本近世文学、中でも曲亭馬琴の作品研究が知られています。しかし、その研究対象は近世小説にとどまらず、上代から幕末までの日本古典文学全般に精通しており、その博識さは『国文学概論』においても明らかです。同書では、日本古典文学を時代順に網羅的に解説し、現代の読者にも分かりやすい入門書として高い評価を得ています。

学術的な貢献においては、1994年に『近世小説 営為と様式に関する私見』により第16回角川源義賞を受賞。これは、近世小説の成立過程や表現技法を独自の視点で分析したもので、日本の近世小説研究に大きな影響を与えました。1995年には京都大学より文学博士号を取得し、博士論文も「近世小説・営為と様式に関する私見」と題した、近世小説に関する研究でした。

濱田氏は、単著だけでなく、多くの重要な校訂にも携わっています。代表的なものとして、『馬琴評答集解題』、『洒落本大成』、『異素六帖 古今俄選 粋宇瑠璃 田舎芝居』、『南総里見八犬伝』などがあり、これらを通して日本の古典文学の保存と普及にも貢献しました。特に『洒落本大成』は、全30巻にわたる大規模なプロジェクトであり、編集委員としてその完成に大きく貢献しました。

2010年には『近世文学・伝達と様式に関する私見』、2019年には『国文学概論』、そして2021年には『近世文学・作者と様式に関する私見』と、精力的に著作活動を続けました。これらの著作は、近世小説の様式や作者の意図を深く掘り下げて分析し、新たな解釈を提示しています。

濱田啓介氏の研究は、近世小説研究の新たな地平を切り開き、日本の文学史研究に大きな足跡を残しました。91歳で逝去されましたが、その業績は、日本の国文学研究において不滅のものとなるでしょう。彼の残した著作は、これからも多くの研究者や学生たちに学びと刺激を与え続けることでしょう。

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