瀬戸博晴

瀬戸博晴：穴熊の使い手から指導者へ

瀬戸博晴（せと ひろはる）氏は、1956年11月6日生まれの将棋棋士です。2000年に引退するまで、将棋界で活躍しました。師匠は二上達也九段で、棋士番号は140番。東京都新宿区出身です。

奨励会員時代とプロ入り

4歳で兄から将棋を教わった瀬戸氏は、中学1年生の頃に将棋道場に連れていかれたことをきっかけに、将棋にのめり込みます。わずか2年後にはアマチュア四段の腕前となり、高校2年生の16歳で奨励会に入会しました。

5級からスタートした奨励会生活でしたが、初段昇段までわずか1年半というスピード出世を遂げます。この頃、振り飛車穴熊戦法を多用したことから「穴熊の瀬戸」と呼ばれ、その名を広めました。しかし、プロ入りへの関門である三段で長らく停滞期を経験します。

転機は、師匠である二上達也九段から送られてきた年賀状の一言でした。「穴熊の限界を知る」というその言葉は、瀬戸氏に居飛車矢倉を多用するよう転向させるきっかけとなり、1979年10月18日、三段昇段から3年4ヶ月で、ついに四段昇段、プロ入りを果たしました。

プロ棋士としての活躍

プロ入り後も、再び穴熊戦法を多用し、特に相手が居飛車党の場合には、その戦法を駆使しました。居飛車穴熊の先駆者としても知られています。1985年には、公式戦で師匠の二上九段、そして兄弟子の羽生善治氏と対戦する機会に恵まれますが、残念ながら両者ともに敗北しました。しかし、同年に行われた棋聖戦では一次予選、二次予選を突破し、本戦へと進出。本戦では中原誠名人に敗れましたが、その実力を見せつけました。

1989年には、全日本プロトーナメントで5回戦進出を果たすなど、活躍を見せます。順位戦では、8期目から10期目にかけて3期連続で降級点を喫するなど苦戦もありましたが、棋士生活10期目となる1999年度を最後に現役を引退しました。引退後も竜王戦昇級者決定戦に参加するなど、公式戦を最後まで戦い抜きました。

人物像と引退後

瀬戸氏は、2012年には自宅がテレビ番組で紹介されるなど、プライベートな面でも注目を集めました。自宅は鉄筋コンクリート造りの4階建てで、半地下には将棋の研究スペースを設けていたとのことです。家族は妻、長男、長女、そして柴犬、猫、ジュウシマツと、賑やかな家庭を築いています。特技は卓球で、プロ級の腕前とも言われています。

若手時代は実践を重視し、特に街道場めぐりなどの武者修行で鍛錬を積みました。引退後は民間企業に勤務しながらも、アマチュアへの指導や普及活動に尽力しています。

数々のエピソードも残されています。例えば、1995年には珍しい反則負けを経験したことも。後手番にも関わらず、相手が指す前に自ら初手を指し、相手が1手も指さないまま勝負が終わってしまったという、非常に珍しいケースでした。

羽生善治氏とは兄弟子として、同門の唯一の棋士という間柄です。穴熊戦法を得意とした独特の棋風、そして指導者としてアマチュア将棋界に貢献する姿勢、瀬戸博晴氏の棋士人生は、多くの将棋ファンに記憶されています。

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