火の接吻

『火の接吻』（仏: Les amants de Vérone）は、1949年に公開されたフランス映画であり、アンドレ・カイヤットが監督を務めました。ウィリアム・シェイクスピアの不朽の名作『ロミオとジュリエット』を基に、脚本家のジャック・プレヴェールとアンドレ・カイヤット監督が共同で制作し、国際的な成功を収めました。イタリアでは1949年に、その他の国々では1951年に公開されています。

あらすじ

物語は、ムラーノの若いガラス職人アンジェロが、映画女優ベッティナに恋をするところから始まります。ベッティナは新作映画『ロミオとジュリエット』で使用する調度品を探すため、プロデューサーと共にムラーノを訪れていました。アンジェロは、ガイドのラファエレと共にベッティナを見学に訪れます。

ラファエレはベッティナたちを、サン・マルタン運河近くのマリア邸へと案内します。かつてヴェネツィアの名門貴族であったマリア家は、没落し、当主エットーレは過去の栄光にすがっています。従兄弟のアメデオは戦傷の後遺症で精神を病み、機関銃を乱射する真似事を繰り返しています。エットーレの妻ルチアと家政婦レティティアもまた、どこか風変わりな人物です。唯一まともなのは、エットーレの娘ジョルジアでした。ラファエレはマリア邸を経済的に支援しており、ジョルジアの婚約者であることを主張していました。

ジョルジアはベッティナに頼み込み、映画の撮影所でスタンドインの仕事を得ます。アンジェロはベッティナを一目見ようと撮影所を訪れますが、エキストラと間違われ、衣装を着せられることになります。撮影は第二幕第二場、有名なバルコニーのシーンでした。ロミオ役の俳優が梯子を怖がったため、アンジェロが代役として梯子に登ることになります。バルコニーには、ジュリエットに扮したジョルジアがいました。2人は出会った瞬間に激しい恋に落ちます。

ヴェローナでのロケーション撮影には、ジョルジアとアンジェロも同行し、夢のような日々を過ごします。しかし、レティティアの密告により、2人の関係はラファエレの知るところとなります。ジョルジアを連れ戻しにきたラファエレは、バルコニーで一夜を共にした2人を目撃し、激怒します。彼はごろつきを雇い、アンジェロを殺害しようとしますが、失敗に終わります。家名を重んじるエットーレは、娘に手を出したアンジェロを憎み、レティティアを使ってアンジェロをマリア邸に呼び出し、殺害しようとします。しかし、アンジェロはこれを回避します。しかし、アメデオが発砲した機関銃の弾丸がアンジェロを直撃し、彼は重傷を負います。マリア邸を訪れていたラファエレも流れ弾に当たり、即死します。アンジェロは重傷を負ったまま撮影所にたどり着き、セットの陰でジョルジアの腕に抱かれながら息絶えます。ジョルジアもまた、割れたガラスの破片で動脈を切って自らの命を絶ちます。

この映画は、ヴェネツィアの美しい風景を背景に、運命に翻弄される若い男女の激しい愛を描いた悲劇であり、観る者の心に深く刻まれる作品です。

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