火夫

火夫（かふ）とは

火夫とは、蒸気機関を動かすために不可欠なボイラーの火を扱う専門職です。別名「缶焚き（かまたき）」とも呼ばれます。蒸気機関車においては機関助士、蒸気船では機関員（軍艦の場合は機関兵）として、それぞれの機関を動かす上で重要な役割を担っていました。また、ボイラー以外にも、火葬場の火を扱う職員も火夫と呼ばれることがあります。

英語では「ストーカー（Stoker）」とも呼ばれ、これは火を「焚く」という行為を表しています。

火夫の仕事内容

石炭を燃料とする場合、火夫の主な仕事は、シャベルを使って石炭をボイラーに投入することです。蒸気機関車（SL）を例に挙げると、石炭を乗せたシャベルは非常に重く、ボイラーの燃焼状態や線路の勾配に合わせて、均等に火室内に石炭を散布する必要がありました。この作業は非常に高度な技術を必要とし、撒き方が悪いと機関士から叱責を受けることも少なくありませんでした。

労働環境も非常に過酷でした。作業場は高温で狭く、走行時の振動で常に揺れていました。そのため、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかり、熱射病で倒れる人も珍しくありませんでした。蒸気機関車を動かす上で、火夫はなくてはならない存在でしたが、その仕事は過酷を極めたのです。

鉄道における火夫の仕事

鉄道の蒸気機関車における火夫（機関助士）の仕事は、以下のようなものがありました。

ボイラーに火を入れる前に、灰やチリを取り除く。
ボイラーに水を補給する。
作業開始前に、十分な燃料（石炭）があることを確認する。
火を起こす。
走行状況に合わせて、適切な火力を調節する。
その他、機関士の指示に従い、機関車の維持に必要な様々な作業を行う。

蒸気機関車の火夫は、機関士（運転士）を目指す者のキャリアパスとして、見習いの形でこの仕事を行うことが一般的でした。

機械化

ボイラーの火室に石炭を投入する作業は、非常に重労働であったため、機械化も進められました。大型の固定式ボイラーには、標準的な装置として石炭投入機が搭載され、大型の蒸気機関車にも、火夫の負担を軽減するために取り付けられました。機関車用の石炭投入機は「メカニカルストーカー」と呼ばれ、補助蒸気機関で駆動するスクリュー式コンベアーで石炭を火室に投入します。投入された石炭は、火夫が操作する蒸気ジェットによって、火室全体に散布されます。

また、石炭火力発電所では、粉砕した粉末状の石炭を燃焼させるボイラーが一般的です。

文化との関連

アメリカの劇作家ユージン・オニールの戯曲『毛猿』の主人公ヤンクは、汽船の火夫として働いています。この作品は、産業社会における労働者の疎外感を描いたもので、火夫という職業が、当時の労働者の象徴として描かれています。

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