火槍

火槍（かそう）

火槍は、宋の時代に子窠（しか）によって考案され、実戦で使用された初期の火薬兵器です。その後の発展において、さまざまな名称や構造を持つものが現れました。

名称の変遷

使用された王朝や構造のわずかな違いによって、火槍は以下のように様々な名称で呼ばれました。

突火槍（とっかそう）
梨花槍（りかそう）
火門槍（かもんそう）
槍砲（そうほう）

現代の中国においては、ライフル銃以前の銃、特にマスケット銃を指す場合があり、その際には火矛槍（かぼうそう）などと言い換えられることもあります。中国語では現在でも銃を「槍」と表記します。

構造

火槍の基本的な構造は、火薬を紙で包んだもの、または節を除いた竹筒に火薬を詰めたものを長い柄の先に取り付け、点火して敵に突き出すというものです。炸裂時の爆発や火花によって攻撃や威嚇を行います。ロケット花火のように矢を飛ばす火箭（かせん）も火槍の一種として扱われることがあります。

初期の火薬は不純物が多く、爆発力も弱かったため、火薬そのものによる攻撃力は期待できませんでした。そのため、主に威嚇を目的として使用されました。爆発音は300メートル先でも聞こえたとされ、威嚇効果は十分でした。攻撃力を高めるために、火薬に金属片を混ぜて殺傷能力を向上させることもありました。

しかし、竹製のものが多いため、基本的には使い捨てであり、再装填にも時間がかかりました。初期の火薬は不発や遅発などの暴発も多く、射程も短く、命中精度も低かったため、火縄銃のように隊列を組んでの一斉射撃や狙撃を行うことは困難でした。南宋では、主に攻城戦での防衛兵器として、北方から侵入する金やモンゴルの兵士に対して使用されました。金も飛火槍と呼ばれる類似の兵器を使用しました。精度の低さや不発を克服するため、後世にはカチューシャ式ロケット砲のように多段式に改良された火車（かしゃ）と呼ばれるものも存在したと言われています。

歴史

火薬は唐代（618年 - 907年）の中国で発明されました。850年頃に書かれた『真元妙道要路』には、硝石、硫黄、炭を混ぜると燃焼や爆発が起こりやすいことが記述されており、この頃には原始的な黒色火薬が発明されていた可能性があります。1040年頃には、曾公亮（そうこうりょう）が黒色火薬の製法を公表しました。

1132年、金との戦争中に起きた内乱鎮圧のため、宋が火槍を投入したのが最初の実戦使用例とされています。

13世紀には、モンゴル帝国がイランに侵攻した際、中国人技術者が操作する投石機で火薬弾が投げられました。1280年には、地中海東部のマルクス・グラエクスとシリアのハッサン・アッ・ラムマが中国の火器、火槍について記述しています。また、イスラム文明圏のシリア、マムルーク朝でも火薬に関する情報は豊富でした。1300年頃に書かれたとされる『シェムス・エディン・モハメネッド文書』には、マドファと呼ばれる火槍が描かれています。

1288年当時の青銅製の銃身が中国で発掘されたことから、モンゴル支配下の中国が火槍から銃へと装備を転換したことが明らかになりました。銃は西欧で発明されたと考えられていましたが、モンゴル帝国を通じてヨーロッパに伝わったと考えられています。

1326年にスウェーデンで発見された壺型の銃は、モンゴル帝国に支配されていた南ロシアから伝わった銃が変形したものと考えられています。火薬を鉄や青銅で包み、弾丸が前方にのみ飛ぶように改良されたパムディと呼ばれるものも開発されました。フィレンツェでは大砲が開発され、以後ヨーロッパでは大砲が発達しました。イベリア半島では1330年代までに銃だけでなく大砲も使用されていました。

1368年にモンゴル勢力を北へ押しやり成立した明王朝の時代には、筒を青銅で作るなどの改良が加えられた火竜槍が開発され、北元や新たに勃興してきた女真族に対して使用されました。

応仁の乱の頃に火槍が日本に輸入されましたが、威力不足のため普及しませんでした。

15世紀の神聖ローマ帝国では、フス戦争などで一般市民や農民がハンドカノンという対騎士用の火槍を開発して使用しました。銃のように小脇に抱えて点火することができないため、肩に載せて撃っていました。点火から発射までの時間が非常に長く、命中率も低く、銃身が破裂して使用者が死亡することも多かったため、敵が密集している際の威嚇にしか使用できませんでした。これが改良され火縄銃が生まれ、西洋における銃火器の元祖となりました。

大航海時代（15世紀半ばから17世紀半ば）のヨーロッパでも、ファイアランスという火槍とほぼ同じ火器が考案、使用されましたが、これも攻撃というよりは目くらましや威嚇に用いられました。多重に火薬を仕込んでおけば連続して爆発させることも可能で、暴発から身を守るために鎧を着用して使用されました。

脚注

関連項目

火縄銃
火薬
銃
大砲
武器
兵器
コングリーヴ・ロケット／マイソール・ロケット（英語版）

外部リンク

中国古代的火箭究竟有多牛？ - 腾讯網

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