北元

北元の歴史とその影響

北元（ほくげん、拼音：Běiyuán）は、1368年に元（大元）から分かれた政権で、元の最後の皇帝であるトゴン・テムルが明の北伐から逃れてモンゴル高原に逃れたことに始まります。この政権は、遊牧民の部族を支配しながらも、漢民族の農耕地域を失った後もその名の下に存在し続けました。

北元の成り立ち

北元は、1368年から1388年までの間に存在し、主にモンゴル高原を中心に広がりました。元は自らの政権を依然として「元」と呼び続け、その自称は「モンゴル国」としてのアイデンティティを保持していました。ただし、この時期の元は、明に対して抗争しつつ、漢民族の占有地域からは疎外されていました。なお、明では北元を完全な滅亡と見なしており、1388年に皇統が断絶したとされています。

北元の歴史を知る上で重要なのは、クビライ家の後継者たちがこの政権の中で権力を持っていた点です。彼らはハーン位を維持しつつ、遊牧地域で権力を振るいました。しかし、1388年にはトグス・テムル・ハーンがクビライ家出身の皇族により殺害され、元の正統な皇統は一時的に断絶する事態が起きました。

権力闘争と部族分裂

その後、オイラトなどの部族が存在感を強め、モンゴル高原での権力闘争が行われます。1388年にイェスデルがオイラトの支持を受けてハーンに即位しますが、この時代のモンゴルは四十のモンゴル部族（ドチン・モンゴル）と四つのオイラト部族（ドルベン・オイラト）に分断されていきました。明の文献で「韃靼」と呼ばれるようになったのも、この時期からです。

1410年頃までには、アルクタイが一時的に力を持ちますが、その後穏やかではなく、分裂と対立が続きます。最終的には、北元の遺産ともいえる治世が続くものの、複数のハーンが共存する様相へと変化します。

後の影響と覇権の移行

ダヤン・ハーンがハーンに即位した1480年以降は、モンゴルの再編も進み、各部族間での結束が試みられるものの、内部分裂が続くことになります。彼の死後、チャハル部やオイラトの覇権争いは激化し、結局、1634年のリンダン・ハーンの死をもってチャハル部は崩壊し、満州の後金に滅ぼされます。

清国の成立に伴い、ハルハ部を残しつつも他の部族が清に従属し、かつての北元の領土も清の支配下に含まれるようになりました。

終焉と再編

モンゴル史における北元の影響は、現代に至るまで語り継がれています。モンゴルにおける民族のアイデンティティ、部族の形成、さらには清の支配におけるモンゴルの立場など、多くの領域においてその痕跡が見られます。北元は、モンゴル高原の歴史や社会の発展において重要な役割を果たしていたことがわかります。

以上のように、北元はモンゴルそれ自体の歴史においても重要な意味を持つ時代であり、その後のモンゴル社会や文化に大きな影響を与えることとなったのです。

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