火災旋風

火災旋風の概要

火災旋風は、主に広範囲にわたる大規模な火災の際に発生する現象で、局所的に非常に強い風を伴う炎を持った旋風です。この現象は、山火事や市街地の大火、さらには石油コンビナートでの火災など、多くの場面で見られ、地震や空襲のような自然災害でも発生することがあります。日本語では「火災旋風」または「火事旋風」と表記され、英語では「fire whirl」と呼ばれています。

火災旋風は、その見た目が竜巻に似ていますが、竜巻は上空の気象条件によって発生する全く異なる現象である点に注意が必要です。現在のところ、火災旋風の詳細な発生メカニズムは完全には理解されていませんが、いくつかの仮説が存在します。基本的な考え方としては、火災が周囲の酸素を消費し、それにより周囲から新たに空気を吸い込むことで局地的な上昇気流が形成されるというものです。この上昇気流が熱された空気を上層に押し出し、その結果として炎を伴った旋風が生じるとされています。

特に、強風の条件下では、火災による上昇気流は垂直ではなく風下に傾き、二股の渦を形成することが確認されています。2016年の糸魚川大火の解析結果もこの観察に一致しており、これが延焼の速さを増す要因となっている可能性が示唆されています。また、都市部のビル風による火災旋風の発生も懸念されています。

火災旋風の内部では、風速が100m以上に達することがあり、巻き込まれた人々は高温のガスや炎を吸い込み、呼吸器に深刻な損傷を受けて窒息する危険性があります。旋風の温度は1,000°Cを超えることもあり、その際の輻射熱は甚大な被害をもたらします。

火災旋風の分類

火災旋風は、主に以下のように分類されています。

• - 黒煙状の竜巻状渦: 火炎を伴わない渦で、火災域の周辺で発生しやすい。
• - 火柱状渦: 火炎を伴い、火災域内で発生する。
• - 火災嵐: 火災領域全体の空気が回転する現象。

Lee（1972）の研究によると、火災旋風には静止型と移動型の二つのタイプが存在することも報告されています。

主な発生事例

火災旋風は過去のいくつかの大規模な災害で確認されています。1755年のリスボン地震や1923年の関東大震災をはじめとして、その他も数多くの発生例があります。特に関東大震災では、焼死者が多く出た本所被服廠跡や横浜、小田原、真鶴、厚木で火災旋風の発生が報告されています。その際、自転車や荷車、さらには人も空中に巻き上げられた証言があり、推定される上昇気流は時速30〜50メートルにも達したと言われています。

さらに1945年のドレスデン大空襲や東京大[[空襲]]、広島と長崎への原子爆弾投下時にも火災旋風の発生が確認されています。

近年の事例

2003年にはカリフォルニア州での山火事や、ケンタッキー州のウイスキー会社の貯蔵庫火災などで火災旋風が発生しました。また、2011年の東日本大震災後にも多くの観察が行われていることから、この現象は今後も重要な研究テーマであると言えます。このように火災旋風は、自然災害や大規模な火災において、人命や財産に深刻な影響を及ぼす可能性がある厄介な現象です。

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