火砕サージ

火砕サージとは

火砕サージ（かさいサージ、pyroclastic surge）は、火山噴火に伴って発生する現象の一つです。火砕流と類似していますが、火山ガスを多く含んでいるため、密度が小さく、より高速で流動する特徴があります。しばしば「サージ」とも呼ばれます。

火砕サージは、そのガス成分の多さから、火砕流とは異なり乱流を形成すると考えられています。時速100キロメートルを超える高速で移動することもありますが、固体粒子の量が少ないため、乱流によって粒子が分散しやすく、その流動形態は比較的短時間で終息します。一般的に、到達距離は最大で5キロメートル程度とされています。

火砕サージの種類

火砕サージは、発生する状況によっていくつかの種類に分類されます。

ベースサージ (base surge): 火山噴火の初期段階や、水蒸気爆発によって発生することが多い、比較的低高度を広範囲に広がるサージです。
グラウンドサージ (ground surge): 地面を這うように流れるサージで、地形の影響を受けやすいとされます。
灰雲サージ (ash-cloud surge): 噴煙柱（火山灰雲）から分離して発生するサージです。

また、火砕流の先端からガスがジェット状に噴出する現象も確認されていますが、これが独立したサージなのか、火砕流の一部なのかについては、まだ議論が続いています。

火砕サージの発生例

過去に発生した火砕サージの例として、以下の噴火が挙げられます。

イタリア、ヴェスヴィオ火山 (79年噴火)
北海道駒ヶ岳 (1929年噴火)
明神礁 (1952年噴火)
アイスランド、スルツェイ島 (1963年噴火)
フィリピン、タール湖 (1965年噴火)
三宅島 (1983年噴火)

これらの他にも、世界各地の火山で火砕サージによる堆積物が確認されています。

火砕サージによる災害

火砕サージは、その高速な流れと高温のガスによって、甚大な災害を引き起こすことがあります。

海底[[火山]]の噴火で発生したベースサージは、付近を航行する船舶に被害を及ぼす危険性があります。1952年の明神礁の噴火では、調査を行っていた海上保安庁の船が遭難しましたが、その原因はベースサージによるものと推測されています。

また、火砕流の先端から発生するサージは、火砕流本体と同程度の距離まで影響を及ぼす可能性があります。そのため、火砕流が住宅地などに到達した場合、火砕流本体が到達する前に、建物の破壊や火災が発生することがあります。

火砕サージの発生が予測される火山では、ハザードマップに到達範囲が示されることがあります。住民はこれらの情報に基づいて、適切な避難計画を立てることが重要です。

79年のヴェスヴィオ火山噴火では、火砕サージと火砕流によって麓の都市ポンペイが壊滅し、数千人もの人々が犠牲になりました。

関連用語

火砕流
* 噴火

火砕サージは、火山災害の中でも特に危険な現象の一つです。火山周辺の住民は、日頃から火山の活動状況に注意し、避難経路や避難場所などを確認しておくことが大切です。

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