灯質

灯質（とうしつ）

灯質とは、夜間や悪天候時に船舶が自らの位置を確認するために重要な役割を果たす灯台において、その灯台固有の光り方を指す言葉です。それぞれの灯台は、異なる光のパターン、色、周期を持つことで識別され、航海者はこれらの情報から目的の灯台を見分け、現在位置や針路を確認します。この灯質に関する情報は、主に航海に必須の海図や海上保安庁が発行する灯台表に、定められた記号を用いて表記されています。

灯質の記号

灯質は、光り方のパターンに応じて様々な記号で表現されます。主な記号とその意味は以下の通りです。

F (不動光 - Fixed):
常に一定の明るさで点灯し続ける光です。光が消えることはありません。
Occ, Oc (明暗光 - Occulting):
点灯している時間の方が、消灯している時間よりも長い光です。規則的に暗くなります。
Fl (閃光 - Flashing):
比較的短い光を、一定の間隔で発するパターンです。点灯している時間の方が、消灯している時間よりも短い光です。
Iso (等明暗光 - Isophase):
点灯している時間と、消灯している時間が等しい光です。
Q, QK Fl (急閃光 - Quick Flashing):
非常に速いテンポで連続して光る閃光です。通常、毎分60回を超える頻度で閃光を発します。
IQ, I Qk Fl (断続急閃光 - Interrupting Quick Flashing):
急閃光が連続するものの、その間に比較的長い消灯時間を挟むパターンです。群閃光の一種で、個々の閃光が急閃光です。
V Q, V Qk Fl (超急閃光 - Very Quick Flashing):
急閃光よりもさらに速いテンポで連続して光るパターンです。
LFl (長閃光 - Long Flashing):
一般的な閃光よりも点灯時間が長い閃光です。通常、2秒以上の点灯時間を持つものを指します。
S-L Fl (短長閃光 - Short-Long Flashing):
短い閃光の後に長い閃光が続くパターンを繰り返す灯質です。
Mo (モールス符号光 - Morse Code):
モールス符号に対応した点滅パターンで光を発する灯質です。特定の符号を点滅で表現します。
Alt (互光 - Alternating):
異なる2色以上の光を交互に発し、その間に暗くなる時間がない灯質です。

また、上記の基本的なパターンを組み合わせた灯質や、グループとして繰り返される灯質を示す記号もあります。

Gp Occ, Oc(回数) (群明暗光 - Group Occulting):
一定間隔ごとに、複数回の明暗光がグループとして現れる灯質です。
Gp Fl, Fl(回数) (群閃光 - Group Flashing):
一定間隔ごとに、複数回の閃光がグループとして現れる灯質です。
Alt Occ, Al.Oc (明暗互光 - Alternating Occulting):
互光でありながら、明暗光の特徴（点灯時間の方が長い）を持つ灯質です。
Alt Fl, Al.Fl (閃互光 - Alternating Flashing):
互光でありながら、閃光の特徴を持つ灯質です。
Alt Gp Fl, Al.Fl(回数) (群閃互光 - Alternating Group Flashing):
一定間隔ごとに、複数回の閃光が交互に異なる色で現れる灯質です。
F Occ, F Oc (連成不動明暗光 - Fixed and Occulting):
常に点灯している不動光と、明暗光を組み合わせた灯質です。
FFl (連成不動閃光 - Fixed and Flashing):
常に点灯している不動光と、閃光を組み合わせた灯質です。
F Gp Occ, F Oc(回数) (連成不動群明暗光 - Fixed and Group Occulting):
常に点灯している不動光と、群明暗光を組み合わせた灯質です。
F Gp Fl, FFl(回数) (連成不動群閃光 - Fixed and Group Flashing):
常に点灯している不動光と、群閃光を組み合わせた灯質です。
Flso (連成不動等明暗光 - Fixed and Isophase?):
常に点灯している不動光と、等明暗光を組み合わせた灯質と考えられます。

光の色を示す記号

灯台の光の色も重要な識別要素であり、海図や灯台表では特定の小文字（または大文字）の記号で示されます。

vi, pu: 紫
bu: 青
g: 緑
or: オレンジ
r: 赤
w: 白
am: 琥珀色
y: 黄色

海図での灯質記号の使われ方

海図上では、灯台や光を示すシンボルと共に、その光に関する様々な情報が記号や数字で付記されます。これらの情報は通常、以下の順序で記載されます。

灯質 → 色 → 周期（秒 s） → 灯高（メートル m） → 光達距離（海里 M）

例えば、海図に「Al Fl (2) w r 15s 23m 20M」と記載されている場合、これは以下のような灯台であることを示しています。

Al Fl (2): 群閃互光であり、2回の閃光がグループとして繰り返されるパターンです。
w r: 光の色は白 (w) と 赤 (r) が交互に現れます。
15s: この一連の光のパターンが15秒で繰り返される周期を持っています。
23m: 平均海面から灯台の光源までの高さが23メートルです。
20M: この光が標準的な大気状態において到達する距離が20海里です。

航海者はこれらの記号を正確に読み取ることで、夜間や視界不良時でも特定の灯台を識別し、自船の位置を把握し、安全な航路を選択することができます。灯質記号の理解は、船舶の安全な運航にとって基礎的かつ極めて重要な知識と言えます。

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