灰色かび病

灰色かび病：世界的な植物病害とその対策

灰色かび病は、ボトリティス・シネレアという糸状菌が引き起こす植物の病気です。この菌は世界中に広く分布しており、果樹、野菜、花卉など200種以上の植物に感染することが知られています。被害は果実、花、葉、茎など植物全体に及び、農業生産に大きな打撃を与えています。

灰色かび病の発生メカニズム

ボトリティス・シネレアは、植物の傷口や弱った組織から侵入します。高温多湿の環境を好むため、梅雨時や収穫期などに発生しやすくなります。感染すると、植物の組織が褐変し、灰色のカビが生えます。このカビは菌糸であり、胞子を大量に生産して他の植物へと感染を広げます。

灰色かび病の防除

灰色かび病の防除は、薬剤散布と耕種的防除の両面から行われます。

薬剤防除

かつてはベンズイミダゾール系薬剤が広く用いられていましたが、耐性菌の出現により効果が低下しました。その後、ジカルボキシイミド系薬剤が使用されましたが、同様の耐性菌問題が発生しました。そのため、現在では単一薬剤ではなく、複数の薬剤をローテーションで散布する方法が有効だと考えられています。薬剤の使用にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、適切な使用方法と使用時期を守る必要があります。

耕種的防除

薬剤に頼らない防除方法も重要です。耕種的防除としては、以下の方法が挙げられます。

抵抗性品種の栽培: 灰色かび病に強い品種を選ぶことで、発病リスクを軽減できます。
適切な栽培管理: 換気の良い環境を確保し、植物の生育を良好に保つことで、病原菌の侵入を防ぎます。
マルチング: 地面を覆うことで、病原菌の発生源となる土壌の湿度を下げることができます。
病斑の早期除去: 感染した植物体の一部を発見したら、速やかに除去し焼却処分することで、感染拡大を防ぎます。
* 収穫後の適切な管理: 収穫後の植物にも感染する可能性があるため、適切な温度と湿度で保管する必要があります。

主要な作物における灰色かび病

灰色かび病は様々な作物に発生しますが、特に被害の大きい作物について紹介します。

トマト

果実だけでなく、葉、茎など植物全体に発生します。

ナス

しおれた花から発生しやすく、花弁やガクに灰色のカビが生えます。

キュウリ

花、幼果、葉などに発生し、幼果は腐敗します。菌核病と症状が似ているため注意が必要です。

イチゴ

果実だけでなく、葉や葉柄にも発生します。初期症状は下葉の枯死です。

ブドウ

開花期と成熟期に高温多湿の条件下で発生しやすいです。

貴腐ワインとボトリティス・シネレア

ボトリティス・シネレアは、ブドウの果実に感染すると貴腐菌と呼ばれ、貴腐ワインの原料となります。貴腐菌の作用によってブドウの糖分濃度が高まり、独特の風味を持つワインが造られます。しかし、これは特定のブドウ品種と環境条件下でのみ起こる現象であり、一般的に灰色かび病はブドウ栽培にとって深刻な脅威です。

まとめ

灰色かび病は、世界的な植物病害であり、多様な作物に甚大な被害をもたらします。薬剤防除と耕種的防除を組み合わせた総合的な対策が、この病害の防除には不可欠です。

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