災害時応援協定

災害時応援協定とは

災害時応援協定とは、大規模な災害が発生した際に、被災した地方公共団体（以下、自治体）が単独では対応しきれない様々な応急復旧活動を、他の自治体や民間事業者、関係機関が支援することを目的とした協定です。この協定は、人命救助、物資の供給、医療活動、情報通信など、多岐にわたる分野での支援を円滑に行うために、事前に締結されています。

協定の必要性

大規模災害発生時には、ライフラインの途絶、情報通信網の麻痺、パニックの発生、公共施設の損壊、職員の負傷などにより、被災自治体の災害対応能力は著しく低下します。特に市町村レベルでは、多岐にわたる分野で膨大な量の応急復旧活動を単独で遂行することが困難となります。そこで、物資の供給、医療救護活動、緊急輸送活動などの応急復旧活動について、被災自治体をサポートする協定が、多くの自治体と民間事業者や関係機関との間で締結されています。

自治体と民間事業者との協定

民間事業者は、自治体にはない専門的な技術や知識、資機材などを有しています。そのため、様々な分野の民間事業者と協定を締結することで、広範囲かつ的確な応急復旧活動が期待できます。協定の内容は、締結する事業者の専門分野に応じて、医療救護、物資の提供、輸送業務、情報通信など多岐にわたります。近年、自治体と応援協定を締結する民間事業者は増加傾向にあり、その重要性が増しています。

自治体間の相互応援協定

自治体間では、相互応援協定も広く締結されています。これは、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、よりスムーズな応援体制を構築するためのものです。自主的かつ積極的な応援出動や、被災自治体への応援に関する調整を行う幹事自治体の事前決定など、効率的な支援活動を可能にするための体制整備が進められています。

協定締結のメリット

応援協定を締結することで、受援自治体と応援側の双方にメリットがあります。受援自治体は、被災時に様々な応急対策活動に関する支援を受けられるだけでなく、平常時の物資備蓄にかかるコストを削減できます。特に、非常食や飲料水など消費期限のある物資の提供は、金銭的コスト削減に大きく貢献します。一方、民間事業者にとっては、企業名や団体名が広報されることでイメージアップにつながることが期待できます。また、応援内容は、通常業務で取り扱っている物品や役務の提供であることが多いため、協定締結にあたって特別な準備が不要な場合が多いこともメリットです。

建設業においては、自治体や公的機関との防災協定は社会貢献として評価され、経営事項審査での加点対象となります。医療機関では、病院機能評価の際、ライフライン事業者や医薬品・食料品の納入業者との防災協定が必須とされています。

自治体間の相互応援協定の種類

市町村間の相互応援協定：都道府県内の全市町村を対象とした統一応援協定や、姉妹都市間での協定が締結されています。
大都市間の相互応援協定：政令指定都市間での相互応援協定があり、被災した都市を他の大都市が救援協力します。
都道府県間の相互応援協定：より広域的なものとして、都道府県間でも相互応援協定が締結されています。全国知事会では、全国都道府県広域応援協定が締結されており、全国レベルでの応援体制が整備されています。

全国都道府県広域応援協定の実績

ナホトカ号重油流出事故：京都府が資機材不足となった際に、近畿ブロックの代表県である和歌山県が応援要請を行い、広島県が資機材を提供しました。
新潟県中越地震：新潟県が北海道東北ブロックに応援要請を行い、全国知事会が連絡調整を行いました。
熊本地震：熊本県が九州ブロックの代表県である大分県に応援要請を行い、人的派遣が行われました。

協定の締結方法

協定締結にあたっては、通常、各主体の代表者が署名・押印した協定書が作成されます。締結前にはプレスリリースが行われ、締結式が開催されることもあります。

費用負担

応援によって生じた費用の負担者は、協定書に明記されています。負担者は、応援者、受援者、または両者で協議して決定される場合など、協定によって異なります。全国都道府県広域応援協定では、原則として応援を受けた都道府県が負担しますが、協議によって変更が可能です。

まとめ

災害時応援協定は、大規模災害発生時の自治体機能を補完するために非常に重要な役割を果たします。協定の締結は、被災自治体の迅速な復旧活動を支えるだけでなく、応援する側にもメリットをもたらします。今後も、より実効性の高い協定の締結と運用が求められます。

もう一度検索