炎立つ (NHK大河ドラマ)

NHK大河ドラマ『炎立つ』：奥州藤原氏の栄華と悲劇

1993年7月4日から1994年3月13日まで放送されたNHK大河ドラマ『炎立つ』は、平安時代前期から鎌倉時代初期にかけて、奥州（東北地方）を舞台に活躍した奥州藤原氏の興亡を描いた歴史ドラマです。渡辺謙と村上弘明のW主演という豪華な布陣で話題を呼びました。

三部構成による壮大な物語

全35話からなる『炎立つ』は、大きく三部構成で展開されます。

第一部「北の埋み火」: 奥州藤原氏の祖と言われる藤原経清の生涯を描きます。朝廷への反感を募らせ、安倍一族と手を組み、源頼義率いる朝廷軍と激しく対立する経清の姿が描かれます。
第二部「冥き稲妻」: 経清の遺児である藤原清衡が、数々の困難を乗り越え、奥州の覇者となるまでの道のりを描きます。清衡は、母方の清原氏との複雑な関係性や、源義家との協力関係などを経て、奥州藤原氏の礎を築きます。
第三部「黄金楽土」: 奥州藤原氏の繁栄と滅亡を描きます。第3代秀衡、そして第4代泰衡の時代。鎌倉幕府の成立という大きな時代の流れの中、奥州藤原氏は源義経を保護するという選択を行い、やがて滅亡の道を歩むことになります。

特に、第二部と第三部の間にあたる、第2代基衡の時代（1125年から1169年）については、ドラマでは省略されています。

制作過程の困難とドラマとの相違

『炎立つ』は、高橋克彦による原作小説を基に制作されました。しかし、原作小説の執筆が予定より大幅に遅れたため、脚本の中島丈博は小説に先行して脚本を執筆する状況となりました。そのため、第二部中盤以降は、NHK側の主導でストーリーが構成され、原作小説とは異なる展開や登場人物像が描かれることになりました。この制作過程における軋轢は、脚本担当の中島丈博自身による当時の記事や回想記にも記されています。

撮影とオープンセット

『炎立つ』のために建設されたオープンセットは、撮影終了後も「えさし藤原の郷」としてテーマパーク兼撮影所となり、現在も多くの映像作品制作に利用されています。

放送と視聴率

『炎立つ』は、大河ドラマ史上初めて、放送期間が暦年に跨がるという試みが行われた作品でした。これは、1994年度以降の大河ドラマを半年1シリーズ制とするための準備の一環として行われましたが、1995年以降は再び暦年制に戻っています。なお、平均視聴率は17.7％、最高視聴率は21.6％を記録しました。

その他

第1回の放送は、衆議院議員総選挙の公示日と重なったため、放送時間が変更されました。
2007年には、完全版DVDが発売されました。
キャストには、渡辺謙、村上弘明のほか、里見浩太朗、古手川祐子、佐藤浩市、渡瀬恒彦など、豪華な顔ぶれが揃っています。

『炎立つ』は、奥州藤原氏の栄枯盛衰を壮大なスケールで描き、歴史ドラマとしての高い完成度と、制作過程における数々のエピソードを併せ持つ、記憶に残る大河ドラマとなりました。

もう一度検索