炎黄春秋

概要

『炎黄春秋』は中華人民共和国の月刊誌で、主に中国近代史をテーマとして扱っています。この雑誌は1991年に設立され、毛沢東の秘書であった李鋭や改革派の胡徳平の支援を受けて、元記者や研究者たちによって生まれました。設立以来、タブーに切り込む姿勢を貫き、出版不況にもかかわらず部数を増やし続けました。2015年には、創設時の10倍にあたる約20万部を達成するほどの人気を誇りました。

この雑誌のユニークな点は、非常に少数の従業員（18名）でありながら、約500名の執筆陣を抱えていることにあります。かつて習仲勲元副首相が「『炎黄春秋』弁得不錯」と揮毫することで、公に評価され、党内での信頼を獲得しました。しかし、政治的に敏感なテーマを扱うことから、一般的には改革派やリベラル的な言論の象徴と見なされてもいます。

編集方針

『炎黄春秋』は「実事求是」という原則に基づいて、事実に根ざした評価を行ってきました。この姿勢から、「中国において唯一の雑誌」と称されています。創刊以来、中国当局とは何度も対立し、16回もの大規模な衝突を経験しました。それでも、李鋭をはじめとする党の長老たちの支援を受けつつ、妥協や独立性を保ちながら進めてきました。

中国の改革・開放政策を推進していた江沢民総書記の時代には、支持を受ける立場にありましたが、胡錦濤の就任後は、出版に対する当局の圧力が増し始めました。2008年に李鋭の後ろ盾を失ったことが、出版状況を悪化させる決定的な要因となりました。2010年には、元政治局員の楊汝岱が趙紫陽元総書記に関する回顧録を出版し、タブーを打破しましたが、その後すぐに当局からの規制強化に直面しました。

当局との対立

2012年には習近平が党総書記に就任すると、さらに緊張が高まりました。2013年初頭、雑誌のウェブサイトが一時的に遮断され、その際に憲法上の出版権に関する主張がなされました。メディア統制機関である国家新聞出版広電総局は、同年の初めに発表した記事のうち多くが政治的な指針に違反すると発表しました。

2014年には、編集権や自主権が次第に制限され、主管機関が中国芸術研究院に変更されるに至りました。これに対し、炎黄春秋は妥協に迫られ、一定の条件の下で独立性を保つという合意に達しましたが、自由に表現できる環境ではなくなりました。2015年7月には、新しい編集長が就任し、言論弾圧の激化を理由に辞任を余儀なくされた元編集長が抗議の書簡を発表しました。

廃刊

長年にわたりリベラル派との関連があった『炎黄春秋』ですが、2016年7月に大きな変革が訪れます。中国芸術研究院が社内の人事を変更し、編集部を占拠、雑誌の資産を差し押さえました。これに反発したメンバーは、今後『炎黄春秋』と名乗るメディアとは関係がないと宣言し、廃刊を決定しました。捉え方によっては、この行動は言論弾圧の強化を象徴する出来事といえます。

旧編集部は、憲法に保障された言論の自由が侵害されたとして訴訟を起こしたものの、裁判所は受理しませんでした。廃刊の発表にもかかわらず、当局主導の編集部は出版活動を続ける意向を示し、旧メンバーは「不当な出版」と反発しています。以上の状況から、『炎黄春秋』はその名にふさわしい独立した媒体ではなくなり、党の意向に従うことを余儀なくされています。

結論

『炎黄春秋』の歩みは、中国の言論の自由と権力の圧力との長い闘争を映し出しています。設立当初の理想とは裏腹に、現在では党の影響下に置かれ、多くの支持者や読者を失う結果となっています。

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