炭鉱国家管理問題

炭鉱国家管理問題の概要

炭鉱国家管理問題は1947年に発生した日本の重要な政争の一つであり、当時の片山内閣が推進した政策に由来しています。この問題の根源には、革新政党である日本社会党の片山哲委員長が主導した政策があり、経済復興を成し遂げるために日本のエネルギーの中心である石炭産業を国家管理するという意図がありました。

政権と政策の狙い

片山内閣の基本方針は、私企業が国が期待する生産量（年間3000万トン）を達成できなかった場合、その企業に対して必要な管理を行うというものでした。6月1日に商工相の水谷長三郎は、石炭の国家管理を最優先課題とする意向を公式に表明。閣議でも炭鉱国家管理が承認され、その後、経済安定本部や商工省が協力して、「炭鉱国家管理要綱案」を作成しました。この要綱は、実際に生産を国家が直接管理し、労使が共に経営に参加するという体制を目指したものです。

政治的対立と反発

しかし、この政策に対しては強い反発がありました。政権樹立時の「四党政策協定」を結んでいた日本自由党が7月3日に発表した声明では、労使が一致して自主的に増産運動を展開している中で、経営形態を変えることは有害だと指摘しました。さらに8月19日には、この協定から離脱し、反政府的な立場に転じました。

また、社会党の支援を受けていた労働組合も意見が分かれ、より過激な立場をとる全国炭鉱労働組合が動きを強めることとなります。この時期、炭鉱労働組合全国協議会は新たに役員を選出し、官労使交渉が機能不全に陥りました。

民主党の内紛

加えて、与党の民主党内でも分裂が生じ、芦田均総裁系と幣原喜重郎名誉総裁系の対立が再燃しました。政府案が決まった直後、90名の国会議員が批判声明を発表し、経営者層からのロビー活動により、労使代表が構成される生産協議会が「諮問機関」として格下げされる修正が加えられました。これにより、国会内での議論は難航しました。

最終的には、修正案が国会閉会直前の12月8日に成立しましたが、その過程は極めて不透明でした。

炭鉱国管疑獄

なお、この炭鉱国家管理問題は、後に賄賂疑惑へと発展します。炭鉱経営者による政治工作が疑われ、田中角栄ら8名が起訴されるという事件にもつながりました。こうした一連の騒動は、政治と経済の複雑に絡み合った関係を浮き彫りにし、炭鉱管理問題の重要性を再確認させるものでした。

参考文献

• - 榎本正敏『炭鉱国家管理問題』（国史大辞典9、吉川弘文館、1988年）
• - 萩野喜弘『炭鉱国家管理問題』（日本史大事典4、平凡社、1993年）
• - 師岡佑行『炭鉱国家管理問題』（社会科学大事典12、鹿島研究所出版会、1975年）

この問題は単なる政治的な対立を超えて、戦後の日本の経済復興の在り方に深く影響を与える重要な事件でした。

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