点鼻剤

点鼻剤とは

点鼻剤（てんびざい）は、鼻腔または鼻粘膜に直接投与される医薬品で、主に急性鼻炎やアレルギー性鼻炎の治療に用いられます。これには、点鼻粉末剤や点鼻液剤が含まれます。また、ムピロシンカルシウム水和物のような鼻腔用の軟膏も利用されています。処方箋では、点鼻スプレーを含めて「NDR」と略記されることがあります。点鼻剤は、局所的な使用だけでなく、薬剤の全身投与の研究にも利用されており、高分子に対しての透過性が注目されています。本記事では、主に局所的治療に使用される点鼻剤について詳述します。

点鼻粉末剤

点鼻粉末剤は、有効成分を微粉状に加工し、必要に応じて添加剤を加えた製剤です。一般的には密閉容器に収納され、使用時に適量を鼻腔内に噴霧します。例えば、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル（販売名「リノコートパウダースプレー」）は、ヒドロキシプロピルセルロースを添加することで粘膜への付着性を向上させ、徐放性を持つように設計されています。この噴霧器には60回分の粉末が充填されており、使用するたびにカウンターが動いて残りの噴霧可能回数を表示する仕組みが採用されています。2010年、帝人ファーマによって発売されたこの製品は、残量カウンターが付いた点鼻剤として初めてのものでした。

点鼻液剤

点鼻液剤は、溶液や懸濁液として販売され、使用時に固形の薬剤が溶解または懸濁されます。これには、ナファゾリン硝酸塩（血管収縮薬）、クロモグリク酸ナトリウム（抗アレルギー薬）、フルチカゾンプロピオン酸エステル（副腎皮質ステロイド）などが含まれます。これらの薬剤は多回使用するために、ベンザルコニウム塩化物などの保存剤が加えられており、さらに塩化ナトリウムやブドウ糖などの等張化剤、クエン酸やリン酸などのpH調整剤、カルメロースナトリウムやポリソルベート80などの懸濁化剤が使用されることがあります。

投与経路

主に鼻腔内の疾患を対象とした局所治療に使用される点鼻剤ですが、鼻粘膜は高分子に対しても比較的薬剤透過性が高いため、ペプチドやタンパク質といったバイオ医薬品の投与サポートとしての研究も行われています。1980年代から多くのペプチド製剤が市場に出回っています。解剖学的に、鼻腔は脳に直接つながる「nose-to-brain経路」を持っており、これが中枢神経系疾患においてペプチド誘導体のドラッグデリバリー経路として研究されています。

参考文献

• - 河島進 編『わかりやすい物理薬剤学』広川書店、2005年。
• - 山本昌・岡本浩一・尾関哲也 編『製剤学』（改訂第7版）南江堂、2017年。

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