烏の北斗七星

烏の北斗七星

『烏の北斗七星』は、宮沢賢治の童話集『注文の多い料理店』に収められた作品で、カラスを中心に展開される物語です。作品はカラスの群れが繰り広げる壮大な艦隊と、その艦隊の艦長である「大尉」を通じて戦争や愛情、別れといったテーマを描き出しています。賢治特有の幻想的な要素が漂う中で、登場人物たちの人間関係が丁寧に描写されています。

あらすじ

作品は、数十羽のカラスたちが大艦隊を形成し、寒空の中で日夜訓練を重ねるところから始まります。この艦隊を率いるのは「烏の大尉」です。大尉は艦隊の中で最も美しい声を持つ「砲艦」と呼ばれるカラスと婚約しており、彼らの愛情も物語の重要な要素となっています。しかし、戦闘の危機が迫る中、大尉は砲艦に対し、山烏との大戦争が近いことを伝えます。この告げられた運命を聞いた砲艦は戸惑い、恐れに満ちた心情を露わにします。

登場人物

• - 大尉（艦隊長）：物語の主人公であり、烏の軍隊を指揮するリーダーです。彼は艦隊の正義を守ろうと奮闘します。
• - 砲艦（大尉の許嫁）：艦隊の中でも特に力強い一羽で、大尉の愛する者です。彼女は大尉を支える重要な存在です。
• - 大監督（大艦長）：烏の軍隊の最年長者で、艦隊の指揮を長年にわたり行ってきたが、長い年月の影響で声を失ってしまった老人です。
• - 兵曹長：大尉の部下で、艦隊の運営において彼を支える存在です。
• - 山烏：主人公たちの敵対勢力で、大きな体躯と鋭い目を持つ厄介な存在です。

評価と影響

この作品は、鳥に擬人化されたキャラクターたちを通じて戦争の悲劇や無情を描いている点が評価されており、賢治の数少ない戦争をテーマにした作品の一つです。また、戦後の日本においては、GHQによる検閲により一時発禁となるなど、当時の社会情勢を反映しています。文学研究においても、この作品は賢治の戦争観や愛国心が表現されているとして言及されることが多いです。

作品は、単なる童話としてだけでなく、戦争に対する深い考察をも包括しており、現代の視点から読み返すことでさらに多くの感情や思索を喚起させる力を持っています。ぜひ、多様な視点を交えながら読んでみることをお勧めします。

もう一度検索