無原罪の御宿り (ゴヤ)

無原罪の御宿り

『無原罪の御宿り』は、18世紀後半に制作されたフランシスコ・デ・ゴヤの重要な宗教画であり、聖母マリアが原罪を持たずに生まれたという教義をテーマにしています。この作品は、カラトラバ騎士修道会学校の礼拝堂に設置される主祭壇画の準備習作として1783年から1784年に描かれ、現在はマドリードのプラド美術館に収蔵されています。作品は油彩で、聖母マリアを中心に天使たちや神の存在が描かれています。

制作の背景

ゴヤは1783年、サラマンカのカラトラバ騎士修道会学校のために大作を依頼されました。この依頼は、当時の学長フランシスコ・イバニェス・デ・コルベラによって発注されたもので、学校内の礼拝堂の主祭壇に設置されることを目的としていました。彼はバロック様式の装飾を撤去し、新たに絵画を設置するためのシンプルな祭壇の設計を進めました。

依頼されたのは『無原罪の御宿り』を含む4作品で、聖母マリアを描くこの作品は特に注目を集めます。子供たちや若者に神の教えを伝えるために、美術は重要な役割を果たしていました。

作品の特徴

『無原罪の御宿り』では、聖母マリアが地球と月の上に立ち、白い衣装に青いマントをまとっています。彼女は穏やかな表情で両手を合わせ、神の光に包まれている様子が表現されています。彼女の足元には、リンゴをくわえた蛇が横たわり、その咬みつきの姿から悪の象徴が反映されています。その背後には父なる神が手を伸ばし、聖母を守る姿が描かれています。

デザインの中での聖母の係数は目を引くもので、彼女は画面の中心に位置し、周囲の天使たちや神々と対比を成しています。聖母の周りには、子供の姿の天使たちが囲み、彼女の霊的な純潔を称える様子が見受けられます。ここで、白い百合の花が持たれていることは、彼女の純潔を象徴するアトリビュートとして機能しています。

ゴヤは、この作品が単なる宗教画であるだけでなく、スペイン・バロック様式の要素と新古典主義的な側面を組み合わせた革新的な作品であることに注意して描いています。彼は主題の重要性に応じて聖母マリアの存在感を強調し、画面での彼女の姿に多くの重きを置いています。緊張感ある色彩と光の使い方も、作品の特異性を引き立てています。

来歴

完成後、主祭壇画の『無原罪の御宿り』は1784年に礼拝堂に取り付けられましたが、後の半島戦争によって他の作品と共に失われました。しかし、ゴヤは作品をホベリャーノスに贈呈し、彼の家族のもとに長い間残されました。1850年代中に王立サン・フェルナンド美術アカデミーに帰属されたものの、長い間忘れ去られていました。

1977年、プラド美術館の館長によってゴヤの代表作として認識され、改めて展示されることとなります。この作品は、ゴヤの精神や評価において重要な位置を占めています。今後も多くの人々にその魅力を伝え、宗教画の真髄を感じさせる作品として愛され続けることでしょう。

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