無指向性無線標識

無指向性無線標識（NDB）について

無指向性無線標識（むしこうせい むせんひょうしき、英: non-directional (radio) beacon、NDB）は、航空機の航法支援に用いられる無線装置です。主に中波を利用して全方向に信号を発信し、航空機は自動方向探知機（ADF）を通じてその方向を特定することができます。複数のNDBを利用することで、現在位置をより正確に把握することが可能です。

動作の原理

NDBの基本的な原理は、位置が既知の二つの標識からの角度を基に三角測量を行うことです。これにより、現在の位置を特定します。NDB局は、特定の周波数でモールスコードを用いたコールサインを送信しており、各局の緯度・経度も公開されています。NDBが用いる周波数は国際電気通信連合（ITU）によって指定されており、一般的には160kHzから535kHz、または1605kHzから1800kHzの範囲内です。

航空機側ではADFを使用することで、エリア内のNDB信号を受信し、方向を判定します。もしNDBが利用できない場合でも、中波放送局が受信できれば、その原理を使って方位を把握することも可能です。ただし、NDBはVORに比べて精度が低いとされています。その理由としては、中波の直進性が低いことや、方向探知の誤差が大きいことが挙げられます。

設置と運用

多くのNDB局は50W以上の出力を持ち、最大で2kW以上の出力を持つ局も存在します。大型の出力を持つ局は遠くからの受信が可能ですが、中波は超短波（VOR）に比べ直進性が弱く、山や障害物による影響を受けやすい点には注意が必要です。また、技術の進歩に伴い、古い無線局の運用は縮小されてきました。日本国内では、2004年には54ヶ所のNDBが存在していましたが、その数は年々減少しており、2011年には25ヶ所にまで減少しています。

特に軍事用途では、移動可能なNDBが利用されており、自衛隊の一部ではこの技術を活用して航法支援を行っています。

利用方法

NDBを利用する際には、航空機の受信機に方位計と連動する指向性のアンテナが必要です。通常、ループアンテナが使用されますが、このアンテナを回転させて受信強度が最も高くなる方位を見つける方法が一般的です。ADFシステムは、指定された周波数の信号を受信し、自動的にその方向を追跡します。

ただし、最大で180度異なる方位が同一として識別されるため、特定のNDBに対して両方からの信号を組み合わせて位置を特定することができます。この測位方法は、地図上での二本の直線の交点から求めることができます。

また、航空機がNDBを常に相対的に同じ方向に飛ぶ場合、螺旋状にNDBに接近する「ホーミング航法」や、滑走路の両端に配置されたNDBに基づく着陸方法も存在します。

無線局としてのNDB

日本において、NDBは無線標識局として免許が与えられており、使用される周波数は航空無線航行業務として160kHzから415kHz、1606.5kHzから1800kHzの範囲内から割り当てられています。具体的な運用や周波数に関する詳細は、総務省の告示に基づいて運営されており、利用にあたっては法令を遵守する必要があります。

以上が無指向性無線標識（NDB）の概要です。航空機の航法技術として重要な役割を果たしつつも、現代の技術変化により、今後の運用のあり方が問われています。

もう一度検索