焦茶色のパステル

焦茶色のパステル：競馬と殺人事件が絡み合うミステリー

岡嶋二人のデビュー作にして、第28回江戸川乱歩賞を受賞した長編推理小説『焦茶色のパステル』。1982年の初刊行以来、多くの読者を魅了し続けている作品です。本作は、競馬という独特の舞台設定と、複雑に絡み合う人間関係、そして衝撃的な結末が特徴的な本格ミステリーとなっています。

物語の舞台：幕良牧場と競馬の世界

物語は、東北地方にある幕良牧場を舞台に幕を開けます。この牧場では、牧場長である深町保夫と、著名な競馬評論家である大友隆一の2人が何者かによって射殺されるという事件が発生します。さらに、彼らの死と共に、サラブレッドの母子、モンパレットとパステルも銃撃されてしまうのです。

この事件の謎を解き明かすため、隆一の妻である香苗が動き出します。彼女は競馬について全く知識がありませんでしたが、夫の不審な死をきっかけに、友人の綾部芙美子の協力を得ながら、事件の真相解明に挑むことになるのです。しかし、彼女たちの調査は次々と新たな謎や事件を呼び込み、危険な状況に追い込まれていきます。

複雑に絡み合う人間関係

物語には、香苗と芙美子の他に、様々な登場人物が登場し、それぞれが複雑な人間関係を築いています。競馬好きが集まる喫茶店のマスター、真岡良太郎、香苗の仕事仲間である山路頼子とその夫、山路亮介、そして東陵農業大学の教授である柿沼幸造など、各登場人物はそれぞれの思惑と秘密を抱え、事件の真相に近づこうとする香苗たちの前に立ちはだかります。

さらに、幕良牧場のオーナーである幕良市の市長、織本栄吉や、牧場の事務長である鶴見といった人物も物語に深く関わっており、彼らの言動が事件の真相解明に大きな影響を与えます。これらの登場人物たちの関係性、そしてそれぞれの思惑が複雑に絡み合うことで、物語に緊張感と奥行きが加えられています。

テレビドラマ化

『焦茶色のパステル』は、1985年にテレビドラマとして「血液型殺人事件 霧の那須高原襲われた女探偵」というタイトルで土曜ワイド劇場にて放送されました。主演は中野良子、共演には浅野ゆう子、西田健、岸部シローなど豪華俳優陣が名を連ねています。原作とは設定が一部変更されており、舞台が那須高原の大須賀牧場に、また香苗と芙美子の関係性も変更されています。ドラマ版では、原作とは異なる解釈や展開が加えられており、原作ファンにとっても新たな楽しみ方ができる作品となっています。

まとめ

『焦茶色のパステル』は、競馬という独特な世界観と、緻密に構成された謎解き、そして魅力的な登場人物たちが織りなす本格ミステリー小説です。競馬に詳しくない読者でも十分に楽しめるように、分かりやすく丁寧に物語が展開される一方、伏線や謎解きの巧妙さにも定評があります。小説版とドラマ版の両方を比較しながら楽しむことも可能です。読者の推理力を試す、そして最後に待ち受ける衝撃的な真相に、ぜひご期待ください。

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