熱帯降雨観測衛星

熱帯降雨観測衛星 (TRMM) について

熱帯降雨観測衛星、通称TRMM（Tropical Rainfall Measuring Mission）は、アメリカのNASAと日本の宇宙機関が協力して打ち上げた人工衛星です。このミッションは1997年11月に始まり、2015年4月まで続きました。TRMMは熱帯地域の降雨を中心に観測データを収集することで、気象学や海洋学の研究に重要な情報を提供してきました。

ミッションの概要

TRMMは日本の種子島宇宙センターからH-IIロケット6号機によって打ち上げられました。衛星は太陽非同期準回帰軌道に設置され、主に緯度±38度の熱帯域を観測対象としていました。この衛星の設計寿命は3年であったものの、その後も順調に運用を続け、10年以上にわたり安定したデータを収集しました。

TRMMの観測データは、エルニーニョ現象などの気候現象のメカニズム解明や、地球規模の気候変動の理解を進める上で重要な役割を果たしました。日本とアメリカの共同ミッションであるTRMMの成功を受けて、2014年にはその後継機である全球降水観測計画（GPM）の主衛星が打ち上げられました。

衛星の搭載センサー

TRMMには、アメリカ製の4つの観測センサーに加え、日本が開発した降雨レーダ（PR）が搭載されています。

• - 降雨レーダ (PR): 日本が開発したこのレーダは、13.796GHzと13.802GHzの電波を利用して降雨の強度を測定します。観測幅は220kmで、3次元の降雨構造を捉えることができます。
• - TRMMマイクロ波観測装置 (TMI): この装置ではさまざまな周波数のマイクロ波を使用し、海洋上の雲水量や可降水量を観測します。
• - 可視赤外観測装置 (VIRS): 可視光と赤外線を利用するこの装置は、海面水温や高解像度の雲分布データを提供します。
• - 雲及び地球放射エネルギー観測装置 (CERES): 地球からの放射エネルギーや雲の上端を観測し、気候モデリングに役立つデータを収集します。
• - 雷観測装置 (LIS): このセンサーは雲内部や地表に至る雷の発生位置や強度を観測します。

ミッションの歴史

TRMMの運用は1997年の打ち上げから始まり、定常運用を経て、複数回の運用延長が行われました。2015年にNASAは運用終了を正式に決定し、TRMMは6月に大気圏再突入して消滅しました。

2014年には推進剤がほぼ切れていることが報告され、以降は自然落下に任せる形で自主的に運用を終了しました。高い確率での再突入時期が予測されましたが、予測通りに6月中旬に大気圏に突入し、その役割を終えました。

まとめ

TRMMは、気象学の進展に大きく寄与した衛星であり、その収集データは広範な研究における基盤となりました。このミッションの成果は、気候変動に関する理解を深め、将来の気象衛星ミッションに続く重要な礎となっています。TRMMの観測データは、今後の研究や気候監視に関しても引き続き活用されるでしょう。

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