熱砂の日

映画『熱砂の日』

『熱砂の日』（ねっさのひ、英題：Heat and Dust）は、1983年に公開されたイギリス映画で、ルース・プラワー・ジャブヴァーラの同名小説を原作としています。この映画は1920年代のイギリス領インド帝国と、1982年の現代インドに生きるそれぞれの女性たちの物語を重ね合わせて描いており、異なる時代に生きる彼女たちの苦悩や愛、運命が交錯します。

公開当時、イギリス領インド帝国への関心が再燃していたこの映画は、同時期に公開された「ガンジー」や「インドへの道」とともに、多くの観客から支持を受けました。「熱砂の日」は1983年度の英国アカデミー賞において、作品賞を含む8つの部門にノミネートされ、脚本を手掛けたジャブヴァーラは脚色賞を受賞しました。

ストーリー概要

映画は、1982年の登場人物であるアン（ジュリー・クリスティ）と、彼女の大叔母オリビア（グレタ・スカッキ）が1920年代のインドに生きた女性たちの姿を比較しつつ展開します。アンはラル（ザキール・フセイン）と不倫関係になり、それが彼女の人生にどのような影響を与えるのかが物語の重要なポイントとなります。一方、オリビアはナワブ（シャシ・カプール）と禁断の恋に落ち、彼女もまた愛と社会的な圧力に悩まされることになります。

製作背景

本作は、監督のジェームズ・アイヴォリーと製作者のイスマイール・マーチャントが手掛けました。しかし、撮影中に予算不足に陥り、スタッフや俳優たちは無償で作業を続けざるを得ませんでした。最終的には、編集前のフィルムを見た資産家ジェイコブ・ロスチャイルドの助けにより、映画は完成を見ることができました。このような背景も、作品に込められた情熱と努力を物語っています。

評価と受賞歴

映画は、特にヨーロッパ、とりわけイギリスで高い評価を得ました。ロンドンの興行チャートでは「ガンジー」や「愛と青春の旅だち」に次いで4位にランクインし、多くの観客を魅了しました。また、1983年のカンヌ国際映画祭にも出品され、名だたる作品との肩を並べました。ジャブヴァーラはロンドン映画批評家協会賞の脚本賞を受賞し、映画界における彼女の地位を確立する一因となりました。

批評家からも支持を集めており、ニューヨーク・タイムズのヴィンセント・キャンビーや映画評論家ロジャー・イーバートもそれぞれの視点から絶賛の声を寄せています。また、Rotten Tomatoesでは批評家の支持率が79%を記録し、平均評価は7.1/10という結果となっています。

出演者とキャスト

1982年の時代で登場する主要キャストは、アン役のジュリー・クリスティをはじめ、ラル役のザキール・フセイン、ハリー・ハミルトン＝ポール役のニコラス・グレイスなどが名を連ねています。1920年代を描く登場人物には、オリビア役のグレタ・スカッキや、彼女の夫ダグラス役のクリストファー・カザノフが充実した演技を見せています。

この映画は、単なるラブストーリーではなく、その背後にある歴史的背景や文化的葛藤が色濃く表現されています。女性たちの生き様を通じて、視聴者に様々な感情や考察を喚起する深い作品です。

もう一度検索