片岡市蔵 (4代目)

四代目 片岡市蔵の生涯

四代目片岡市蔵（よだいめ かたおか いちぞう、1880年10月7日 - 1926年12月23日）は、明治から大正時代にかけて活躍した著名な歌舞伎役者です。彼の屋号は松島屋、紋は銀杏丸であり、俳名は我升、そして本名は片岡竜之助です。片岡市蔵は、歌舞伎の伝統と技術を受け継ぎ、独自のスタイルを確立したことで知られています。

幼少期と初舞台

片岡市蔵は東京下谷に生まれ、養子とされる三代目片岡市蔵の影響を受けながら成長しました。彼は1887年9月、東京中村座で三代目片岡亀蔵を名乗り、歌舞伎の世界に初めて足を踏み入れました。このときの舞台は『恋飛脚大和往来』で、新口村の樋口仁右衛門役を演じ、観客に強い印象を残しました。初舞台からわずか数年のうちに彼はその才能を開花させ、役者としての地位を確立していきました。

襲名と名題昇進

片岡市蔵は1904年の正月に四代目片岡十蔵を襲名し、歌舞伎座で『忠孝梅金沢』の百姓与惣兵衛娘おしづ役や、『大磯和田宴』の曾我五郎役で名題昇進を果たしました。演技の才能だけでなく、演出的なセンスも秀でていました。彼の舞台は観客を魅了し、華やかさと迫力を兼ね備えていました。その後、日露戦争に出征し、一時は軍人としての活動も経験します。

戦後の栄光

1906年3月には、歌舞伎座で満期除隊を祝う手興行が行われ、片岡市蔵の名はさらに広まりました。このとき、戦勝の興奮が後押しし、大入りとなったとされています。しかし、悲しいことに、この年の12月に養父の三代目市蔵が亡くなります。彼の死は若き片岡市蔵にとって大きな試練となり、深い悲しみを抱えながらも芸を磨き続けました。

役柄と業績

1909年10月には、歌舞伎座の『馬きり』において四代目片岡市蔵を襲名しました。彼の演じる役は多岐にわたり、特に『熊谷陣屋』の熊谷直実のような立派な武士の役柄に定評がありました。また、女形や所作事も得意としており、特に舞踊『奴道成寺』は彼の代表作として知られています。彼の声量や風格は他の役者との比較でも際立っており、観客に強い印象を与えました。

次代への影響

片岡市蔵の長男には五代目片岡市蔵がいます。彼は父の業績を受け継ぎ、さらなる発展を遂げました。市蔵の影響は次代の役者たちにも色濃く残り、そのスタイルや表現力は今でも多くの歌舞伎ファンに愛されています。四代目片岡市蔵は、その演技力と魅力をもって、多くの舞台を彩り、歌舞伎界における記憶に残る存在となったのです。

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