牛尾安麿

牛尾 安麿（うしお やすまろ）

牛尾 安麿（うしお やすまろ）は、1882年（明治15年）10月17日に生まれ、没年不明の実業家、商人、および篤農家です。明治後期から昭和初期にかけて、特に兵庫県や大阪府を拠点に活動しました。出身階級は兵庫県における平民籍に属していました。

出自

安麿は、兵庫県出身の牛尾彦二郎の次男として誕生しました。後に牛尾彦蔵の養子となり、1904年（明治37年）にその家督を相続しました。養父である彦蔵は、地元で大地主として知られる人物であり、田原銀行の取締役も務めるなど、地域社会で一定の影響力を持っていました。養母の名はちかといい、1853年（嘉永6年）生まれで、兵庫県の進藤杢右衛門の二女でした。

事業活動と主な役職

安麿は、家業として農業を営む一方で、商人としても活動しました。特に「登茂栄」という屋号で毛織物商を手掛けていたことが記録に残されています。また、多角的な事業展開を図り、様々な銀行や会社の経営に参画しました。実業家としての顔を持ち、複数の企業の重役を歴任しました。

彼が関与した主要な役職は以下の通りです。

市川製紙：社長を務めました。
田原銀行：頭取を務めました。この銀行は養父の彦蔵も取締役を務めており、牛尾家と深い関わりがあったと推測されます。
中播銀行：取締役として経営に関与しました。
日本印刷製本：監査役を務めました。

これらの役職から、安麿が製紙業、金融業、印刷・製本業といった幅広い分野で事業を展開し、経営手腕を発揮していたことが伺えます。農業を基盤としながらも、近代産業の発展に貢献する実業家としての一面を強く持っていたと言えるでしょう。

住所

安麿の主な居住地は二箇所記録されています。一つは兵庫県神崎郡田原村（現在の福崎町）で、これは家督を相続した牛尾家の本拠地であった可能性が高いです。もう一つは大阪市東区淡路町二丁目であり、これは商業や実業活動の中心地であった大阪に進出し、事業を展開していたことを示唆しています。

家族

安麿は、波部本次郎の五女を妻に迎えました。妻は1882年（明治15年）生まれで、安麿と同い年でした。夫妻の間には子供がいましたが、具体的な人数や名前などの詳細は資料には明記されていません。

まとめ

牛尾安麿は、農業を受け継ぎながらも、毛織物商として商才を発揮し、さらに複数の企業の経営に参画した多才な人物でした。特に金融機関の頭取や製紙会社の社長を務めるなど、当時の産業界において重要な役割を担っていたことがうかがえます。その活動は兵庫県の地域経済だけでなく、大阪といった都市部の経済活動にも及び、近代日本における地方財界人の一人としてその名を残しています。没年は不明ですが、彼が残した業績は、明治から昭和初期にかけての日本の経済史の一端を物語っています。

参考文献

本記事は、以下の文献に基づいています。

『日本現今人名辞典』日本現今人名辞典発行所、1903年
大日本篤農家名鑑編纂所編『大日本篤農家名鑑』大日本篤農家名鑑編纂所、1910年
人事興信所編『人事興信録』第5版、第6版、第7版、第8版、人事興信所、1918年-1928年
前村信松編『財界フースヒー』ジヤパンエコノミスト社、1923年
『姫路飾磨神崎紳士大鑑』姫路興信所、1924年
商業興信所編『日本全国諸会社役員録 第38回』商業興信所、1930年

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