平民

平民とは

平民、読み方は「へいみん」とは、官位や爵位を持たない一般の市民や人民を指します。通常、貴族と対比される存在であり、特に歴史的背景によってその意味合いは変わってきました。

近代日本における平民

近代に入ってからの日本では、1869年に武士が士族、下級武士が卒族、そして一般の人々が平民として分類されたことが始まりでした。特に1872年の太政官布告第29号で卒族の制度が廃止され、平民という呼称が法令に使用されるようになりました。この法令では、「人民署名肩書ハ何（府県）華族、士族、平民ト記載可致此旨布告候事」との文言があり、平民は華族や士族と明確に区別されることとなりました。「四民平等」や「秩禄処分」を経て、平民は日本の総人口の約93.41%、3110万6514人を占めるに至りました。

具体的には、華族や士族の家に生まれた者が分家した場合には、原則として平民の称号を得ることになります。このことは、原敬のように華族出身でありながらも平民となった例があることからもわかります。また、士族が分家したときも平民の称号を得ることになります。

法的な位置づけ

華族は国家から特別な待遇を受ける一方、士族や平民は法律上の特権は持っていませんでした。つまり、平民という称号はただの家系を示す名称に過ぎず、法律上の特権を意味するものではなかったのです。すなわち、1875年の布告には「人民署名肩書ハ何（府県）華族、士族、平民ト記載可致此旨布告候事」と示されていますが、平民の称号は旧戸籍簿には明示されていない場合がほとんどでした。

その後、日本の制度的な変化がなかったものの、1938年には戸籍から「平民」の表記が削除され、1947年には日本国憲法第14条により華族・士族・平民のゆえによる身分は廃止されました。これにより、平民という用語は法的な枠組みからも姿を消すことになります。

西洋における平民

平民という概念は、西洋においても様々な形で存在しています。例えば、フランスでは「第三身分」として知られ、アンシャン・レジーム時代には聖職者や貴族に次ぐ身分とされました。また、イギリスにおいては、法律上、国王と貴族以外の者を「平民（コモナー）」と呼ぶことが一般的です。ここで注意が必要なのは、爵位を持つ者の家族は貴族とは見なされず、平民に分類される点です。

特に、古代ローマでは貴族以外の市民を「プレブス（平民）」と呼び、奴隷はこのカテゴリには含まれませんでした。これによって、平民の存在はさまざまな国や文化において幅広い意味を持つことになります。

結論

平民は、各時代や文化において異なる役割を果たしてきましたが、一般的に官位や爵位を持たない市民を指すことが共通しています。特に日本の近代においては、平民は社会の大多数を占め、四民平等や身分の改革を通じて大きな影響を与えました。そのため、平民の存在は歴史的にも社会的にも重要な意味を持つと言えるでしょう。

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