牛島閘門

富山市の歴史遺産：牛島閘門

富山県富山市にある牛島閘門は、富岩運河の最上流部、富岩運河環水公園内に位置する、歴史的にも貴重な閘門です。パナマ運河方式を採用したこの閘門は、現在も運用可能な状態を保っており、国の登録有形文化財に登録されています。

富岩運河と牛島閘門の役割

全長約5.1kmの富岩運河は、富山市の発展に大きく貢献しました。特に、運河沿岸に立地する工場への資材搬入や製品輸送において、重要な役割を果たしました。牛島閘門は、いたち川と富岩運河を繋ぐ役割を担い、水位差を調整することで、小型船舶の運河への出入を容易にしていました。

牛島閘門は、いたち川側の標高約3.35mと富岩運河環水公園側の標高約2.7mの約0.65mの水位差を調整する、長さ24.4mのパナマ運河方式の複扉室閘門です。閘門扉は木製の合掌式ゲートで、このタイプの閘門扉は、現在では非常に珍しいものです。

老朽化と復元

陸上交通の発達や環境問題への意識の高まりから、富岩運河の利用は次第に減少していきました。それに伴い、牛島閘門も老朽化が進み、閘門扉を失った状態になっていました。

1970年代には、運河の埋め立て計画も検討されましたが、その後、水辺空間を生かした街づくりへと転換。富岩運河環水公園の整備計画の中で、牛島閘門も往時の姿に復元されることとなりました。昭和初期の写真を参考に、木製の閘門扉も忠実に再現され、2001年には環水公園内に完成しました。2002年には国の登録有形文化財に登録され、その歴史的価値が認められています。

閘門の構造と特徴

牛島閘門の閘室・扉室は、長さ12.2m、幅4.5m、高さ3.25mの規模です。石組みと鉄筋コンクリートを併用した堅牢な構造で、底面には船の通行を容易にするための工夫も凝らされています。閘門扉は、上流側・下流側共に木製マイタゲート（合掌式ゲート）で、直接通水扉を設けて注排水を行う仕組みです。

また、牛島閘門といたち川との接続部には、ローラーゲート式の水門が設けられており、閘門を通過するにはこの水門を開ける必要があります。

現在と未来

現在、牛島閘門は富岩運河環水公園内にあり、誰でも自由に訪れて見学することができます。常時運用可能ではありますが、現在では頻繁に利用されることはありません。しかし、環水公園の散策路の一部として、市民に親しまれる存在となっています。

牛島閘門は、富岩運河の歴史と、かつての賑わいを感じることができる貴重な遺産です。また、環水公園の景観を彩る、美しい建造物でもあります。訪れた際には、その歴史と技術に思いを馳せてみてください。

関連施設：中島閘門

富岩運河の中流域には、中島閘門（国の重要文化財）も存在します。こちらは、富岩運河と河口部との水位差を調整する役割を担い、観光船「富岩水上ライン」の航行にも利用されています。中島閘門は、牛島閘門と並んで、富岩運河の歴史を語る上で欠かせない存在です。

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