牛川喜幸

牛川 喜幸（うしかわ よしゆき）は、日本の造園学における重要な研究者の一人です。1935年10月11日に生まれ、2009年2月16日に亡くなるまで、日本庭園史を専門分野として深く探求しました。

香川県高松市に生まれた牛川は、京都大学農学部林学科で学び、1959年に卒業しました。さらに同大学大学院農学研究科林学専攻へと進み、1961年に修士課程を修了しています。この京都での学びが、後の専門分野へと繋がる基礎を築きました。

大学院修了後、文化庁に入庁した牛川は、主任文化財調査官として日本の重要な文化財の保護と調査に携わりました。特に奈良国立文化財研究所では、飛鳥藤原宮跡の発掘調査部長という要職を務め、古代の歴史や文化遺産の研究・保存に貢献しました。この時期の経験は、後の研究活動においても貴重な財産となったことでしょう。

教育者としては、1993年に長岡造形大学造形学部環境デザイン学科の教授に就任し、後進の育成に尽力しました。また、京都橘大学文学部文化財学科でも教鞭を執り、幅広い分野でその知識と経験を分け与えました。長岡造形大学では名誉教授の称号を授与されています。

研究活動と並行して、学会活動にも積極的に関わりました。1998年から1999年にかけては日本庭園学会の会長を、2003年には日本遺跡学会の会長を務めるなど、関連分野の発展に指導的な役割を果たしました。これらの活動を通じて、研究者間の交流を深め、新たな知見の共有に貢献しました。

牛川の研究成果は、多くの著書として結実しています。写真測量を用いた仏像の実測図集（共著）や、日本の庭園、特に池泉の庭に関する著作、そして古代庭園、寝殿造の研究など、多岐にわたるテーマに取り組んでいます。代表的な著書には、『池泉の庭 日本の庭園』や『日本の庭園』（いずれも講談社）、『古代庭園の研究 水をめぐる造形とその系譜』、『巣雲園考』（同朋舎出版）などがあります。これらの著作は、日本庭園史や関連する文化財研究において、今なお参照されています。

長年にわたる研究と教育、そして文化財保護への貢献は高く評価されました。平成18年度には、造園分野における顕著な業績を称える日本造園学会賞上原敬二賞を受賞。さらに2007年には、国家からの栄誉として瑞宝小綬章を受章しています。

牛川喜幸は、2009年2月16日、虚血性心疾患のため、奈良市の自宅にて73歳でその生涯を閉じました。日本の造園学、特に日本庭園史研究において、その功績は永く記憶されるでしょう。

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