藤原宮

藤原宮は、古代日本において大和国の藤原の地（現在の奈良県橿原市）に設けられた宮殿です。この地には、時代を隔てて二つの藤原宮が存在しました。

最初の藤原宮（5世紀）

最初の藤原宮は、允恭天皇の妃である弟姫（衣通郎姫）のために造営されたと伝えられています。允恭天皇には、忍坂大中姫という后もおり、弟姫は忍坂大中姫の実妹にあたります。允恭天皇の宮とは別に、弟姫の宮が藤原の地に設けられたとされています。

『日本書紀』によれば、弟姫が藤原宮に滞在したのは允恭天皇7年（418年）12月から翌8年（419年）2月までのわずか3ヶ月間でした。弟姫は、藤原宮が天皇の宮から遠く離れていることを理由に、より離れた場所への移動を奏上しました。その結果、弟姫の宮は河内の茅渟の地（現在の大阪府泉佐野市）へ移され、茅渟宮が新たに営まれました。しかし、この最初の藤原宮に関する記述は、伝説的な要素が強いと考えられています。

二度目の藤原宮（7世紀後半-8世紀初頭）

二度目の、そしてより有名な藤原宮は、持統天皇によって建設された藤原京の中心的な宮殿です。持統天皇4年（690年）10月29日には、太政大臣の高市皇子が藤原宮の地を視察し、翌年10月27日には新益京の地鎮祭が、さらに同6年（692年）5月23日には難波王によって藤原宮の地鎮祭が執り行われました。持統天皇8年（694年）12月6日には、天皇が藤原宮へと遷都しました。

この藤原宮は、和銅3年（710年）3月10日に元明天皇が平城宮へ遷都するまで、日本の政治の中心として機能しました。この間の日本の歴史、政治、文化に多大な影響を与えた重要な場所です。現在、宮跡は発掘調査が進められており、その詳細な構造や歴史的背景が明らかになりつつあります。

藤原宮の詳細については、藤原京に関する研究を参照することで、より深く理解することができます。二つの藤原宮は、それぞれ異なる時代背景を持ちながらも、古代日本の歴史において重要な役割を果たした宮殿であると言えるでしょう。

これらの宮殿の存在は、古代日本の政治構造や皇室の動向を理解する上で不可欠な要素となっています。


参考文献

小島憲之・直木孝次郎・西宮一民・蔵中進・毛利正守『日本書紀』2（新編古典文学全集3）、小学館、1996年。
小島憲之・直木孝次郎・西宮一民・蔵中進・毛利正守『日本書紀』3（新編古典文学全集4）、小学館、1998年。
* 青木和夫・稲岡耕二・笹山晴生・白藤禮幸校注『続日本紀』一（新日本古典文学大系12）、岩波書店、1989年。

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