牛石遺跡

牛石遺跡：縄文時代の祭祀と交流の痕跡

牛石遺跡は、山梨県都留市厚原に位置する複合遺跡であり、縄文時代中期末葉の曽利式土器期の住居跡を伴う配石遺構が特徴です。この遺跡は、桂川と大幡川が合流する地点の河岸段丘上にあり、標高461メートル、富士山を望むことができる場所にあります。

遺跡の概要

縄文時代中期は、富士山周辺地域で遺跡数が著しく増加した時代であり、牛石遺跡もその活動期に位置づけられます。静岡県富士宮市の千居遺跡など、同時期には同様の祭祀遺跡が各地に現れています。牛石遺跡は、1979年から1985年にかけて行われた複数回の発掘調査によってその全貌が明らかになりました。

発掘調査の経緯

1979年の第一次調査では、奈良時代から平安時代の住居跡23軒が確認されました。続く1980年の第二次調査では、縄文時代の配石遺構が発見され、遺跡の範囲が特定されました。1981年の第三次調査では、大形環状列石（ストーンサークル）、配石遺構群、弥生時代の住居跡3軒が発見されました。1985年の調査では、縄文中期の曽利式住居3軒、縄文晩期の安行Ⅲa式土器、そして配石遺構が確認されました。

配石遺構の詳細

特に注目されるのは、第三配石区の大形環状列石です。これは東西南北に配置された直径4〜5メートルの小サークル、連結する20〜30メートルの河原石による列石、内側に沿って立石や埋甕を伴う組石状配石の3種によって構成されています。環状列石の周辺には、組石配石や半月状配石も見られます。環状列石内からは中期後葉の土器などの遺物が出土しています。

また、縄文中期後葉の曽利Ⅱ式住居跡2軒、配石遺構の南西からは曽利V式の住居跡2軒も発見されています。

弥生時代の遺物と文化交流

出土した弥生時代中期後半の弥生土器は、静岡県東部や神奈川県西部に分布する長伏式土器や宮ノ台式土器と類似しており、桂川流域と伊豆・西相模方面との間に文化的な交流があったと考えられています。

現在の状況と出土品

発掘調査後、遺跡は埋め戻され、現在は田畑や道路となっています。出土した遺物は、都留市教育委員会によって保管されています。牛石遺跡は、縄文時代の祭祀や文化交流を理解する上で、非常に重要な遺跡です。

参考文献

都留市教育委員会『牛石遺跡』 11巻〈都留市埋蔵文化財調査報告〉、1987年3月31日。
末木健「牛石遺跡」『縄文時代研究辞典』
* 奈良泰史「牛石遺跡」『山梨県史資料編1原始・古代1考古（遺跡）』

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