牧野忠良

牧野忠良は、幕末から昭和初期にかけて活躍した華族です。伊予宇和島藩主、伊達宗城の七男として慶応三年（1867年）に生まれました。幼名は五十若。

忠良の生涯における転機は、明治期に訪れます。三根山（嶺岡）藩主、牧野忠泰の娘である千代子と結婚したのです。明治十五年（1882年）、牧野忠泰が亡くなると、千代子が牧野家の家督を相続することとなります。しかし、当時、女性が家督を継ぐことは一般的ではなく、明治十七年（1884年）には、牧野家は女戸主であったため爵位を授けられることはありませんでした。

状況が一変したのは、明治二十四年（1891年）十二月です。忠良は千代子と結婚し、牧野家の当主となりました。これにより、忠良は子爵位を授与されたのです。これは、家督相続と爵位継承が同時に実現した稀有な事例と言えるでしょう。忠良の結婚は、牧野家の存続と社会的地位の維持に大きく貢献しました。

忠良の爵位は子爵にとどまりませんでした。明治二十九年（1896年）には正五位、明治四十年（1907年）には正四位と、着実に位階を上げています。これは、忠良が華族社会において重要な役割を果たし、貢献した証左と言えるでしょう。

忠良の死後、家督は婿養子である健之助（三井高弘六男）が継承しました。忠良の墓所は、東京都調布市にある多磨霊園にあります。

忠良の生涯は、華族社会における複雑な権力関係や、家督相続の慣習、そして時代の変遷を反映しています。伊達家という名門出身でありながら、婿養子として牧野家に入り、子爵位を得て家督を継承した彼の歩みは、明治期の華族社会の縮図と言えるでしょう。また、彼の爵位昇進は、社会貢献や政治的な活動なども関係していた可能性があり、更なる詳細な調査が必要となります。彼の功績や人となりについては、今後の研究が待たれます。

以下に、忠良の栄典授与の記録をまとめます。

明治24年(1891年)12月24日：子爵
明治24年(1891年)12月26日：従五位
明治29年(1896年)12月21日：正五位
明治41年(1908年)12月26日：正四位

これらの栄典は、忠良が華族社会で重要な地位を占めていたことを示す、重要な証拠と言えます。彼の生涯は、単なる華族の物語ではなく、明治時代の社会構造や権力関係を理解するための貴重な手がかりとなるでしょう。

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