物理演算エンジン

物理演算エンジンについて

物理演算エンジンとは、物体の質量や速度、摩擦、さらには風の影響といった古典力学の法則をシミュレートするためのコンピュータープログラムです。通常、ミドルウェアライブラリとして提供されており、略称として「物理演算」や「物理エンジン」、「Physics」としても知られています。

概要

物理演算エンジンは、衝突判定やダイナミックシミュレーション（動的シミュレーション）を基本に構成されており、単なる静止した物体の力の影響に留まらず、動く物体全体の挙動を再現します。さらに、流体シミュレーションや剛体演算、軟体演算といった高度な技術を用いることもあり、モーションコントロール機能によってスクリプトを使用して物体の動きを操ることも可能です。また、アセットツールを利用して多様な形式のオブジェクトやシーンを読み込むことができます。

物理演算エンジンは、長い間、学術研究や3DCGアニメーション制作などの専門分野でのみ使用されてきましたが、2000年代に入ると、フィジックスを搭載した家庭用ゲーム機やグラフィックカードが登場したことで、より一般的になりました。初めてフィジックスを搭載した家庭用ゲームは1999年にリリースされた『Rocket: Robot on Wheels』で、その後のゲームでは「HD」と「物理演算」が重要なトピックとなっていきました。特に2008年にソニーからリリースされた「リトルビッグプラネット」は、物理演算をゲームプレイの中核に据えており、多くの支持を集めました。

近年、物理演算を搭載した3DCGソフトウェアも増え、かつてはプロユーザーにしか手が出せなかった技術が一般人にも利用できるようになりました。例えば、無料のBlenderなどを活用することで、ユーザーは物理演算を利用した3DCGアニメーションを自ら制作することが容易になっています。また、物理演算を教育目的で活用したソフトウェアも存在し、Algodooなどが代表例です。

応用

物理演算エンジンは主に科学技術計算とエンターテインメント分野で活用されています。

科学技術計算

汎用計算機の始まりであるENIACは、単純な物理計算、特に弾道計算に使用されていました。その後、コンピュータ技術の発展とともに、航空機設計や様々な科学計算へ応用されるようになりました。1980年代には、スーパーコンピュータが気象予測のために流体のシミュレーションを行うなど、数値流体力学として知られる領域での利用も広がっています。

エンターテインメント

一方、エンターテインメント分野では、ゲームなどの用途において、物理シミュレーションの精度よりもスピードやリアルタイム性能が重要視されることが多いです。そのため、精度を若干犠牲にしてでも高速な処理を実現する技術が求められるのが現状です。例えば、PhysX等は、高速化を実現するためにハードウェアとソフトウェアの両面からアプローチを行っています。

物理演算エンジンの例

ライブラリ

• - Box2D
• - Havok
• - Bullet
• - ODE（Open Dynamics Engine）
• - DynaMo
• - Springhead

アプリケーション

• - Algodoo
• - RigidChips

まとめ

物理演算エンジンは、科学技術からエンターテイメントに至るまで多岐にわたって応用されており、実世界の物理法則を仮想環境で再現することで、現実感のある体験を提供しています。これにより、ゲームやアニメーションの制作、さらには教育など、さまざまな分野で利用が進んでいます。

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