特定患者等の郵便等を用いて行う投票方法の特例に関する法律

特定患者等の郵便等を用いて行う投票方法の特例に関する法律

特定患者等の郵便等を用いて行う投票方法の特例に関する法律（通称：コロナ郵便投票法）は、日本の公職選挙法に基づき、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた投票環境に特別な配慮を行うために制定された法律です。この法律は、感染症の影響で自宅療養や宿泊施設で隔離されている方々が、選挙に参加できる機会を確保することを目的としています。2021年6月18日に公布され、6月23日に施行されました。

背景

新型コロナウイルス感染症が流行し始めた2020年初頭から、日本では感染者は隔離措置を取られることが求められていました。特に、軽症や無症状の場合でも、約2週間の隔離が必要とされ、その期間中に選挙が行われれば投票所に行くことが不可能となる問題が浮上しました。これにより、多くの地方自治体や選挙管理委員会が選挙の公正性や投票機会の保障を模索し始めました。

2021年の春には、この問題についての報道が相次ぎ、特に自主隔離中の患者や感染者が投票できない状況がクローズアップされました。総務省は、宿泊施設において期日前投票所を設置することが可能という見解を示しましたが、実際には自宅待機の患者について考慮が不十分で、「現実的でない」との批判が生じました。

特例法の成立

そのため、政府はコロナ感染者の投票機会を確保するために特例法の立法を検討しました。2021年4月7日、加藤勝信内閣官房長官は、検討の必要性を述べました。自民党と立憲民主党による与野党協議が進み、法案は衆議院に提出されましたが、条文の誤りにより本会議での可決が延期されました。最終的に、6月15日に参議院本会議で多くの支持を得て法案は成立しました。

課題と評価

特例法は、2021年7月4日投開票の東京都議会議員選挙から適用されました。この法律に関する共同通信社のアンケートでは、47都道府県の選挙管理委員会の約6割が賛成意見を示しましたが、実施状況には課題もありました。

東京都選挙管理委員会の発表によると、特例法が適用された東京都議会議員選挙では、投票した療養者は110名でした。しかし、世田谷区では自宅療養者138名に制度の案内を郵送したにもかかわらず、実際に投票を行ったのはわずか9名でした。これに対し選挙管理委員会は、手続きの煩雑さや法律の公布から施行までの期間が短かったことを指摘し、制度の周知徹底が不十分であったと認識しています。

さらに、特例法の対象者は新型コロナウイルスの陽性反応が確認された感染者に限定され、濃厚接触者には適用されない点も問題視されています。また、帰国者に対する扱いも限定的であり、国政選挙のみが対象となっているため、さらなる改善が求められています。

このように、コロナ禍における特例郵便投票制度には一定の成功が見られる一方で、制度の運用や周知の課題が残っており、今後の選挙においてもその改善が期待されています。

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