特殊蝶番レ号

特殊蝶番レ号（特殊蝶番試作レ号）

特殊蝶番レ号は、第二次世界大戦中に日本で初めて飛行した国産ヘリコプターであり、その開発は横浜工業専門学校（現在の横浜国立大学工学部の前身）で行われました。この機体は、陸軍の依頼を受けて、1944年に廣津萬里教授を中心に多くの学生が取り組んだ結果、誕生しました。特にその名称である「特殊蝶番」は、機体の核心部分であるローターのハブに由来しています。

開発の背景

1944年春、ドイツやアメリカでのヘリコプター実用化の進展に刺激を受け、日本陸軍は自国でもヘリコプターを開発するよう求めました。これに応じ、横浜工業専門学校の広津教授と学生たち約20から40名が共同で開発に着手し、陸海軍や萱場製作所も協力しました。

試作一号機の設計

試作一号機は1人乗りであり、独自の双ローター方式を採用しました。機体の構造は、資材不足から木製であり、外皮を持たない剥き出しの胴体フレームでした。機体は中央に空冷ガソリンエンジンを2基搭載し、その背後に操縦席がありました。試作機は実験的な特性を持ち、実用性は低かったものの、技術的挑戦の象徴とされました。

構造の詳細

機体は、メインローターの駆動装置とそれを支える4翅メインローター、続いて空冷エンジン、操縦席、そして小型の4翅テイルローターで構成されています。テイルローターは、メインローターのアンチトルクを相殺し、さらに機体の姿勢制御を行う役割も果たしました。この組み合わせにより、初めての国産ヘリコプターが形成されました。

開発の苦難

ローター基部の技術的課題は非常に多く、大戦末期の日本の工業技術力は低下しており、学生自身が加工した部品が多かったため、試作機はしばしば故障しました。1944年7月、試作一号機が完成し、海軍の技術者による操縦試験が行われましたが、機体は突然数十センチ浮上した後、横転して大破しました。

その後、学生たちは試作二号機の開発に取り組みましたが、1945年に入ると空襲が激化し、開発が進まないまま終戦を迎えました。終戦後、機体は埋められ、ほとんどの資料は焼却処分され、実機が完成することはありませんでした。

レ号の特徴と操縦方法

レ号の特筆すべき点は、メインローター基部に搭載された「連翅蝶番」機構があり、これが揚力の不均衡を補正する役割を果たしました。また、操縦は固定翼機と同様にスティックとフットペダルで行われ、自立的な操縦が可能でした。

試作二号機

試作二号機は、試作一号機とは異なる形態で設計され、鋼管フレームが用いられ、より強力なエンジンを搭載する予定でした。しかし、終戦によりこの機体も未完に終わりました。

結論

特殊蝶番レ号は、日本の航空技術の試みと苦悩を象徴する存在でした。技術的な挑戦と限られた資源の中での努力が、この国産ヘリコプターの開発に結実しています。実用化には至りませんでしたが、その歴史は後の航空機開発に影響を与え続けています。

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