特殊要素モデル

特殊要素モデルとは

特殊要素モデル（The specific-factors model）は、リカードモデルを基にし、複数の生産要素を導入して貿易に関する理論を拡張したものです。通常、国内の移動可能な労働だけでなく、特定の産業に結びついた生産要素を考慮に入れる点が特徴です。このモデルは、デヴィッド・リカードとジェイコブ・ヴァイナーの名前を取ってリカード＝ヴァイナー・モデル（The Ricardo–Viner model）とも称されます。

モデルの歴史的背景

特殊要素モデルの基礎的な概念は、ジェイコブ・ヴァイナーの1932年の論文に端を発します。その後、ロナルド・ジョーンズやポール・サミュエルソンなどの研究者たちの研究によって、理論がより整然とした形にまとめられました。

モデルの構造

このモデルでは、通常、2つの国とそれぞれの国に2つの産業が存在します。これに加え、3つの生産要素が用意されます。国際的には財が取引されますが、生産要素は国家間で移動することができません。労働は国内の異なる産業間で移動可能であり、どちらかの財の生産に使用されることになります。一方で、産業別に特化した生産要素は、異なる産業間では移動できないという特徴があります。このモデルでは、労働の投入量を増やしても、その限界生産性は減少していくとされ、最終的には労働者間での名目賃金の均等化が図られます。

貿易におけるモデルの予測

特殊要素モデルは、貿易がもたらす影響を明確に予測します。具体的には、輸出業に特化した生産要素を持つ経済主体は、その所得が増加することが期待されます。しかし、輸入競争の激しい産業に特化した主体の場合は、所得が減少する可能性が高まります。労働者の実質所得に関しては、効用関数の設定が必要であり、結論を得るのは難しいとされています。このような点は「新古典派的曖昧さ」として知られています。

リカードモデルでは貿易によって全ての経済主体が利益を得るとされたのに対し、特殊要素モデルでは貿易によって所得格差が広がる可能性を示します。このため、国内で貿易に賛成と反対の立場が存在する理由が説明できます。

モデルの拡張

特殊要素モデルを動学的に解釈することも可能です。たとえば、産業特有の生産要素が産業間で移動できるという前提を設定すると、このモデルはヘクシャー＝オリーン・モデルへと変わります。言い換えれば、特殊要素モデルはヘクシャー＝オリーン・モデルの短期的な形と解釈することができます。

研究の応用

最近の研究では、中間財を産業特有の生産要素として採用し、特殊要素モデルの予測がどのように変化するのかを検討している論文も多く発表されています。このような新しいアプローチにより、経済学界での理解が深化することが期待されています。

特殊要素モデルは、貿易を理解するための重要なフレームワークとして、経済学において重視されています。

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