犬島精錬所

犬島精錬所：栄華と終焉、そして再生

犬島精錬所は、かつて岡山県邑久郡朝日村（現在の岡山市東区）の犬島に存在した銅の精錬所です。最盛期には2000人を超える従業員が働く活気あふれる場所でしたが、銅価格の暴落という時代の波に翻弄され、その歴史に幕を閉じました。しかし、その跡地は現代アートの舞台として新たな命を吹き込まれ、多くの人々を魅了しています。

設立と発展

1909年（明治42年）、犬島精錬所は帯江鉱山の精錬所として産声を上げました。当時、帯江鉱山を経営していた実業家・坂本金弥は、鉱山が引き起こしていた公害問題の対策として、犬島に精錬所を建設することを決断します。当初の運営は坂本合資会社が行っていましたが、1913年（大正2年）には藤田組（現在のDOWAホールディングス）に買収されました。

藤田組は瀬戸内海における中央買鉱精錬所を目指し、精錬所の規模を拡大。最盛期には月間300トンの銅を精錬するまでになりました。この時期、銅価格が高騰していたこともあり、犬島には5000から6000人もの人々が暮らしていました。当時の銅鉱石は各精錬所が争奪戦を繰り広げるほどの人気ぶりでした。

終焉

しかし、好景気は長くは続きませんでした。1916年（大正5年）をピークに銅価格は暴落し、1919年（大正8年）には最盛期の半値にまで落ち込みます。この価格暴落に加え、犬島精錬所が自山の鉱山や電錬所を持っていなかったことも災いし、1919年中に操業を停止せざるを得なくなりました。その後、1924年（大正13年）に住友合資会社が買収を試みましたが、再建は叶わず、1925年（大正14年）に廃止となりました。

公害問題

犬島精錬所は、帯江鉱山の公害対策として建設されたにも関わらず、操業開始後は自らも煙害を引き起こしました。これは、同じく銅の精錬所があった直島や四阪島と同様の問題でした。当時、犬島実務学校に勤務していた歌人・太田郁郎は、この煙害を詠んだ歌集「毒煙」を出版し、その悲惨な状況を伝えています。

その後

閉鎖後、犬島精錬所の跡地は、テレビドラマ「西部警察」や映画「カンゾー先生」、「鉄人28号」などのロケ地として利用されました。しかし、2001年（平成13年）には、ベネッセコーポレーション会長（当時）の福武總一郎氏によって買収され、直島福武美術館財団により、精錬所跡を利用した犬島アートプロジェクトの一部として再利用されています。現在は、アートの力によって過去の遺産が新たな価値を生み出し、多くの人々を魅了する場所へと生まれ変わっています。

写真

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脚注

関連項目

犬島
犬島アートプロジェクト
池田謙三 (冶金学者)) - 精錬所の設計に携わった。

外部リンク

犬島精錬所美術館
* 瀬戸内国際芸術祭2010

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