狩口台きつね塚古墳

狩口台きつね塚古墳：明石海峡を見下ろす歴史の証

神戸市垂水区の丘陵地帯、明石海峡を望む高台に位置する狩口台きつね塚古墳は、円墳形式の古墳です。その存在感は、周囲の風景に溶け込みながらも、静かに歴史を語りかけてくるかのようです。

古墳の概要：二重の周濠と豊富な副葬品

直径24メートル、2段築成の墳丘を持つこの古墳は、特徴的な二重の周濠を有しています。これは同時代の古墳としては珍しい構造で、外濠の直径は52メートルに及びます。墳丘表面には葺石や埴輪は見当たりません。

埋葬施設は、南西方向に開口する両袖式横穴式石室です。全長9.5メートルにおよぶ石室からは、多数の副葬品が発見されました。これらは、被葬者の身分や当時の社会状況を知る上で貴重な手がかりとなります。

出土品には、赤色顔料が塗布された組合式家形石棺片、金銅装馬具（鏡板、雲珠、杏葉、辻金具など）、須恵器（高坏、坏など）、そして鉄製品（鐙、鏃、刀、刀子、釘など）が含まれています。これらの品々は、被葬者が高い地位にあったことを示唆しています。 石室の規模も大きく、玄室は長さ4.5メートル、幅2.2メートル、高さは約3メートルと推定されています。羨道も5メートルと長く、墓道も6メートルに及びます。

築造時期は古墳時代後期の6世紀後半頃（580年頃）と推定され、7世紀初頭頃まで追葬が行われたと考えられています。

発掘調査と現状

1979年と1992年には発掘調査が行われ、その結果を基に1995年には調査報告書が刊行されました。1997年には、古墳とその出土品はそれぞれ神戸市指定史跡、神戸市指定有形文化財に指定され、歴史的価値が認められています。現在では、石室は埋め戻されていますが、墳丘と周濠は復元整備され、一般公開されています。訪問者は、歴史の息吹を感じながら、この貴重な遺跡を目の当たりにすることができます。

文化財としての価値

狩口台きつね塚古墳出土品145点は、神戸市埋蔵文化財センターで保管されています。これらの遺物は、当時の生活様式や社会構造を解明する上で重要な資料であり、歴史研究に大きく貢献しています。

参考文献

史跡説明板（神戸市教育委員会、2016年設置）
渡辺伸行「狩口台きつね塚古墳」『続 日本古墳大辞典』東京堂出版、2002年
* 『明石の古墳II（発掘された明石の歴史展）』発掘された明石の歴史展実行委員会、2012年

まとめ

狩口台きつね塚古墳は、その規模、構造、そして出土品の豊富さから、古墳時代後期の地方豪族の墓と考えられています。明石海峡を見渡せる立地、二重の周濠という特徴的な構造、そして数多くの副葬品は、この古墳が当時における重要な存在であったことを物語っています。現在も保存・公開されているこの遺跡は、未来へと続く歴史の繋がりを感じさせてくれる、貴重な存在です。

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