独立系書店

独立系書店（Independent Bookstore）は、その名の通り、特定の巨大資本やチェーン組織に属さない形態の書店を指します。明確な定義は存在しませんが、一般的に経営者が個人事業主や小規模な法人であることが多いのが特徴です。個人書店、セレクト書店、小型書店といった類語で呼ばれることもあります。

特徴

独立系書店は、大規模な資本力を持つチェーン書店とは一線を画します。チェーン店が複数の店舗を展開し、書籍販売だけでなく、CD/DVDレンタル、文具、オンライン販売など多角的な事業を手がけることが多いのに対し、独立系書店の多くは単一の店舗で経営され、書籍販売を主軸としています。これにより、特定のテーマに特化した品揃えや、店主の個性が反映された空間づくりが可能となります。

米国における歴史と復活

米国では20世紀後半、自動車社会の進展に伴う郊外型ショッピングモールの拡大や、B. Dalton、Waldenbooks、Bordersといった大型チェーン書店の台頭により、独立系書店が競争にさらされました。さらに1990年代半ばにオンライン書店Amazonが登場し、競争環境は一層激化。価格競争などにより、多くの独立系書店が経済的な圧迫を受けて閉店を余儀なくされ、1995年から2000年にかけてその数は40%も減少したとされています。

しかし、2010年代に入ると状況が変わります。電子書籍の普及もあり、Bordersなどの大手チェーンが経営破綻・清算される中、独立系書店が再び存在感を増し始めました。アメリカ書店組合（ABA）によれば、米国内の独立系書店の数は2009年から2015年にかけて35%増加しています。この復活の背景には、「地元で購入しよう（Buy Local）」という消費者の意識の高まりや、独立系書店が提供する独自の価値があると考えられています。具体的には、店主による丁寧な本の選書（キュレーション）、読書会や著者サイン会といったコミュニティイベントの開催などが挙げられます。

現在の書籍市場は、利便性や価格を重視しオンラインストアを利用する層と、書店での発見や文化交流を求める層とに二極化しつつあり、独立系書店は後者のニーズに応える形で支持を広げています。近年では、経営難に直面した独立系書店を支援するための地域ぐるみの取り組みも見られるようになっています。

日本における状況

日本でも長期的な出版不況により多くの書店が減少傾向にある中で、新たな動きとして独立系書店を開業する人々が全国的に増えています。画一的な品揃えではなく、特定の分野に特化したり、独自の視点で本を選んだりすることで、個性的な空間を作り出しています。取次大手も、こうした新しいタイプの書店への対応を進めています。青森の八戸ブックセンターや京都の恵文社一乗寺店などが、その代表的な例として挙げられます。

社会的役割

独立系書店は単に本を販売する場所にとどまらない役割を担うことがあります。小規模ながらも、そこで開催される著者イベントや読書会は文学サロンのような機能を持つこともあり、地域における文化交流の拠点となります。また、大手書店では扱われにくい新人作家の作品や独立系出版社の本を積極的に取り扱うことで、多様な出版文化を支える役割も果たしてきました。

独立系書店を題材にした作品

独立系書店をテーマにした作品も存在します。アメリカの独立系書店が直面する困難を描いたドキュメンタリー映画『インディーズ・アンダー・ファイア』（2006年）や『ペーパーバック・ドリーム』（2008年）、大手チェーンと独立系書店の競争をフィクションとして描いた映画『ユー・ガット・メール』（1998年）などが知られています。

世界の著名な独立系書店

世界各地に歴史を持ち、それぞれの地域や文化において重要な役割を果たしてきた独立系書店が存在します。代表的な例としては、パリのシェイクスピア・アンド・カンパニー書店やジョゼ・コルティ、サンフランシスコのシティ・ライツブックストア、ロンドンのワトキンス・ブックスやスクーブ・ブックスなどが挙げられます。特定のテーマに特化した書店もあり、フェミニズム専門の女書店（台湾）やクインビーズ・ブックストア（米国）、LGBT専門の晶晶書庫（台湾）、黒人・アフリカ文学専門のニュー・ビーコンブックス（ロンドン）なども独立系書店の一形態として挙げられます。香港の銅鑼湾書店のように、社会的な背景から注目を集めた書店もあります。

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