独習指定文献

独習指定文献とは

独習指定文献（どくしゅうしていぶんけん）は、日本共産党における党員教育の一環として設けられた制度です。これは、党員が共産党の思想をより効果的に学ぶために、共産党の執行部が選定した文献群を指します。この制度は、党員個人が自習する「独習」と、集団で学ぶ「集団学習」の両面があります。

制度の背景

1962年に、日本共産党中央委員会書記長の宮本顕治によって始まったこの制度は、党の教育活動を重視する流れの一環です。これは、党の分裂を招いた「50年問題」の教訓に基づき、党勢を拡大し、基盤を強化する目的がありました。1961年に創刊された雑誌『月刊学習』や、1962年に開設された中央党学校に続き、同年の5月に「独習の意義と文献について」が発表され、具体的な文献が指定されました。

独習指定文献の内容

独習指定文献は、党員が自らのペースで思想を身につけるためのものであり、特に学生党員や民青同盟の幹部党員には、マルクスの『資本論』、レーニンの『唯物論と経験批判論』、そして宮本顕治の著作『日本革命の展望』の3つが重要な文献として強調されました。特に『日本革命の展望』は短縮形で「日革展」と呼ばれ、党内で重要な位置を占めました。

このリストは固定的なものではなく、時代の流れに応じて更新されてきました。たとえば、レーニンの『国家と革命』は党の平和革命路線には合わなくなったため、リストから除外されることになりました。これは、党の立場や信念が社会状況と連携して変わる必要があるための措置です。

制度の廃止とその後

2004年には、独習指定文献制度が正式に廃止されました。党執行部は、常に変わる政治情勢に柔軟に対応するため、固定的な文献リストは時代遅れであると位置付けました。今後は、党大会や中央委員会での決定を基に、随時文献を紹介し、学習を進める方式が採用されることとなりました。これにより、不破哲三をはじめとする党内の理論家たちの著作が、党内外でより広く宣伝されるようになりました。

文献リスト

2001年頃の具体的な独習指定文献は、以下の通りです。書籍は初級、中級、上級に分けられました。

初級

- 『日本共産党第22回大会決定』
- 『日本共産党綱領』
- 『日本共産党規約』
- 『自由と民主主義の宣言』
- レーニン『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分』
- マルクス『賃金、価格および利潤』
- エンゲルス『空想から科学への社会主義の発展』
- 宮本顕治『党建設の基本方向』（新日本出版社）
- 不破哲三『綱領路線の今日的発展』（新日本出版社）

中・上級

- レーニン『カール・マルクス』
- エンゲルス『ルードウィヒ・フォイエルバッハとドイツ古典哲学の終結』
- マルクス『ゴータ綱領批判』
- レーニン『資本主義の最高の段階としての帝国主義』
- 宮本顕治『党史論』（新日本出版社）
- 不破哲三『スターリンと大国主義』（新日本新書）

また、民青同盟内でも独習指定文献制度が導入され、同様の推薦図書が設けられています。これにより、党員の教育と意識改革は継続され、より広範な政治活動が促進されています。