狼の血族

『狼の血族』（原題: The Company of Wolves）は、1984年に製作されたイギリスのファンタジーホラー映画です。監督はニール・ジョーダン、製作はパレス・プロが手掛け、日本での配給はヘラルド・エースと日本ヘラルド映画が行いました。

この作品は、アンジェラ・カーターの短篇集『血染めの部屋』に収録されている「狼たちの仲間」と「狼人間」を原作としています。有名なグリム童話『赤ずきん』をモチーフに、ダークファンタジーとして独自に解釈し、再構築された物語が展開されます。その独特の世界観と映像表現が高く評価され、1985年のアボリアッツ・ファンタスティック映画祭審査員特別賞を受賞しています。

物語の中心人物は、ロザリーンという若い女性です。彼女は、狼に襲われた姉の葬儀の後、森に住む祖母の家を訪れます。そこで、祖母から狼男に関する恐ろしい話を聞かされます。祖母の話は、狼男の正体や狼男を見分ける方法、そして狼男にまつわる村の悲しい歴史を織り交ぜたものでした。

ロザリーンは、森で少年と出会います。二人は森の中を歩きますが、ロザリーンは突如姿を消し、少年は狼の姿を見て恐怖に慄き、村へと逃げ帰ります。村人たちが捜索する中、ロザリーンは無事に戻ってきます。彼女は、鴬の巣の卵から孵ったという赤ん坊の像を母親に見せます。この奇妙な出来事の後、父親を含む村の男性たちは狼退治へと出発します。

一方、ロザリーンは祖母から新たな話を聞きます。それは、貴族の結婚式に現れた村娘が、花婿に捨てられた後、復讐として貴族たちを狼に変えてしまったという、悲しい物語でした。狼退治から帰ってきた父親は、狼の足が人間の手に変わっていたことを発見します。

祖母の家へ向かう途中、ロザリーンは眉毛が繋がった不気味な狩人と出会います。その狩人はロザリーンより先に祖母の家へ到着し、祖母を殺害していました。恐怖におののいたロザリーンは狩人に発砲し、狩人は狼の姿に変身します。ロザリーンは狼を撫でながら、狼少女の話を語り始めます。その場に両親や村人が到着し、家の中には二匹の狼がいることが分かります。一匹はロザリーンの十字架を身につけており、もう一匹は森の中へ逃げていきます。

そして、物語は、ロザリーンが屋根裏部屋のベッドで目を覚ます場面へと移ります。夢だったのか現実だったのか曖昧なまま、彼女に狼の群れが襲いかかってくるのです。

この映画は、グリム童話『赤ずきん』をベースとしながらも、アンジェラ・カーターの独特の解釈と、ニール・ジョーダンの監督による幻想的な映像表現によって、見る者に強い印象を与えます。夢と現実の境界が曖昧になる展開、狼の象徴的な意味、そして女性の内面世界などを巧みに描いた、複雑で魅力的な作品となっています。

スタッフには、監督のニール・ジョーダン、製作総指揮のスティーヴン・ウーリーとニック・パウエル、製作のクリス・ブラウンとスティーヴン・ウーリー、原案と脚色のアンジェラ・カーター、撮影のブライアン・ロフタス、特殊メイクのクリストファー・タッカー、音楽のジョージ・フェントン、そして美術のアントン・ファーストなど、多くの才能が結集しています。

もう一度検索