猟官制

猟官制（りょうかんせい）とは

猟官制とは、公職の任命を政治的な背景に基づいて行う制度を指します。特に、19世紀にアメリカやイギリスで発展し、政権が変わるたびに多くの公務員が新しい政権に関連する人物に交替していました。この制度は「スポイルズ・システム」や「党人任用制」とも呼ばれています。

由来と背景

猟官制の起源は、選挙によって政権を掌握した際に、その政権の支持者で公職を固めるために公務員を入れ替える行為にあります。アメリカの上院議員ウィリアム・マーシーが、公職を狩猟の獲物のように扱うことを皮肉ってこの名称を取り入れました。
当時は必ずしも好ましからず見られていたわけではなく、近代民主主義を守るためには必要な制度として考えられていました。特に、官僚が国民の監視の下にいないことに対する危惧があったため、政権側は自党の支持者に公職を広く開放することで、国民の意思が反映されると信じていました。

制度の発展

アメリカ独立後、特にアンドリュー・ジャクソンが大統領に就任した1828年以降、猟官制は更に強化されます。ジャクソンは政権支持者を公職に任命することで、独占されていた重要職の不満を解消しようとしました。この動きにより、単純な州政府でも公職に誰でも就ける文化が芽生えました。また、エイブラハム・リンカーン大統領の時代にはこの制度がさらに強固になり、厳格な政党組織が形成されていきました。

社会構造との関係

猟官制は、その時代の社会構造と密接に関連していました。特にアメリカ国内での資本主義の発展は、社会の複雑化を促し、利害関係の錯綜をもたらしました。その結果、猟官制は金権政治、腐敗の温床へと転化する危険を孕んでいました。これを受けて、政府職員の任用に資格試験を課す法律が1871年に採択、1881年にはジョン・ガーフィールド大統領が猟官制の批判に直面し、制度改革の動きが加速しました。

資格任用制への移行

このような背景から、資格に基づいて公職を任命する「メリット・システム」の導入が求められ、最終的には1883年に連邦公務員法が制定されました。この法によって、公職に対する政治的任用が制限されるようになりました。しかし、州政府では依然として「公職交代制」が行われ続けていたため、全体の制度を改変することは容易ではありませんでした。

日本における猟官制

日本においても、第二次世界大戦前には内務省が政治の実権を握り、政権交代ごとに公然、不公然の選挙干渉を実施しました。そのため、日本でも「政治の粛正」という名目で公職の交代が行われ、政党間で派閥が形成された結果、行政の運営が影響を受けました。これにより、革新官僚が台頭する要因にもなりました。

結論

歴史的に見ると猟官制は、政治的な党派性が公職にもたらす問題点と、専門知識を持たない公務員による行政の公正性をどう確保するかという課題を常に抱えている制度といえます。政治と行政の間のバランスを取ることが、今後の課題になっています。

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