猫の災難

猫の災難

「猫の災難」は、古典的な落語の演目であり、別名では「猫災」とも呼ばれています。この作品の原話は、宝永5年に出版された『かす市頓作』の中の「猫の番」に由来しています。もともと上方の落語として知られていましたが、三代目柳家小さんが江戸落語に取り入れたことで、多くの人に親しまれるようになりました。

あらすじ

物語の主人公である熊五郎は、長屋に住む貧しい男です。ある日、彼は酒を飲みたいと思いますが、手元にお金がないことに気づきます。困っていたところ、隣に住むおかみさんが通りかかります。おかみさんは、病気の猫の看病でいただいた大きな鯛を持っており、その身を食べたあとの頭と尾を捨てに行くところでした。熊五郎は、まだ食べられる部分があると考え、その鯛の頭と尾をもらうことにします。

その直後、熊五郎の兄貴分が訪ねてきます。ちょうど鯛の身がザルの下に隠れていたため、兄貴分は熊五郎が立派な鯛を持っていると勘違いします。彼は、その鯛を使って一杯飲おうと持ちかけますが、酒を飲みたい熊五郎は、誤解を解くことなく、兄貴分に酒を買いに行かせてしまいます。

兄貴分が酒を買い戻ってくると、熊五郎は隣の猫が身を持っていったと嘘をつきます。兄貴分は怒りながらも、持ってきた酒を熊五郎の家に置いて、今度は鯛を買いに出かけます。この間、酒が飲みたくなった熊五郎は、少しずつ酒を口にし始め、最終的には全部飲み干してしまいます。

鯛を買って戻った兄貴分が酒がないことに気づくと、熊五郎は、隣の猫が酒瓶を倒して全てこぼしてしまったと再び嘘をつきます。それに対し兄貴分は怒って隣に文句を言いに行くと言い出しますが、そうした一部始終をおかみさんが目撃しており、熊五郎の嘘がすぐにバレてしまいます。兄貴分は「俺に何をさせたかったんだ？」と問い詰めますが、熊五郎はシレッと「猫に詫びといてくれ」と言うのです。

サゲのバリエーション

「猫の災難」の結末には、上方落語のオリジナルなサゲがあります。隣家の猫がやってきて神棚を拝み、「悪事災ニャン（災難）を免れますように」と話す情景が描かれています。一方、江戸落語のサゲは柳家小さんによって創作され、文の中で熊五郎が自らの嘘を隠そうとしつつも軽薄さが露呈する構造になっています。このように、演じられ方によって異なる趣を持つ「猫の災難」は、日本の落語の中でも特に面白く、古典の魅力を強く持っています。

「猫の災難」は、ユーモアと誤解が織り交ざったコメディであり、古典落語における人間関係や道徳の教訓が潜在的に含まれています。現代にも通じる笑いの要素を持ち、落語を知らない人でも楽しめる一編です。

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