獣たちの熱い夜 ある帰還兵の記録

獣たちの熱い夜 ある帰還兵の記録：ベトナム難民の苦悩と希望の物語

1981年、香港で生まれた『獣たちの熱い夜 ある帰還兵の記録』（原題：胡越的故事、英題：The Story of Woo Viet）は、アン・ホイ監督が手掛けた社会派青春映画です。邦題に「帰還兵」とありますが、実際にはベトナム帰還兵は物語に登場しません。代わりに描かれるのは、ベトナム戦争の爪痕を負いながらも、懸命に生きる人々の姿です。

舞台は、戦争によって荒廃した土地。主人公ウー・ユー（チョウ・ユンファ）とサム・チン（チェリー・チャン）ら、幾多の困難を経験してきたベトナム難民たちの姿が映し出されます。彼らが抱える心の傷、希望と絶望の狭間で揺れ動く葛藤、そして新たな未来への模索が、繊細かつ力強く描かれています。

アン・ホイ監督は、美しい映像と切ない音楽を効果的に用いることで、登場人物たちの感情を深く表現しています。特に、戦争の記憶が彼らの心に刻み込まれている様子や、互いを支え合いながら生きていく彼らの強さが印象的です。

チョウ・ユンファ、チェリー・チャンを始めとする豪華キャスト陣の熱演も、本作の魅力をさらに引き立てています。彼らの演技は、観る者に深い共感と感動を与え、ベトナム難民の苦悩と、その中で見出される希望を肌で感じさせます。

日本では劇場公開されませんでしたが、香港ニューシネマフェス'89で『胡越的故事』の邦題で上映された後、『獣たちの熱い夜 ある帰還兵の記録』という邦題でビデオ化、DVD化され、多くの日本人に知られるようになりました。

本作は、単なる戦争映画ではありません。戦争の悲惨さだけでなく、人々の強さ、そして未来への希望を描いた、普遍的なテーマを持つ作品です。ベトナム戦争を知らない世代の人々にとっても、人間ドラマとして十分に楽しめるでしょう。

スタッフ

監督：アン・ホイ
製作：ビッキー・リーリャン、テディ・ロビン
脚本：アルフレッド・チョン、邱剛健
撮影：ビル・ウォン
音楽：ヴァイオレット・ラム

キャスト

ウー・ユー：チョウ・ユンファ
サム・チン：チェリー・チャン
ラップ・クワン：コラ・ミャオ
* その他：ロー・リエ

作品情報

ベトナム難民という、当時としてはセンセーショナルな題材を取り上げた本作は、香港ニューシネマ運動の重要な作品の一つとして高く評価されています。戦争の爪痕と、それでも前を向こうとする人々の姿を丁寧に描いた、心に響く作品です。もし機会があれば、ぜひ一度鑑賞してみてください。

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