獣人雪男

獣人雪男

『獣人雪男』は、1955年8月14日に公開された東宝制作の特撮映画です。この作品は、戦後の特撮映画の中で『ゴジラ』や『透明人間』に続く第4作目として位置づけられています。監督は本多猪四郎、主演には宝田明が起用され、キャッチコピーは「魔か原始人か？ 怪力と戦慄の巨獸人、これが雪男だ！」です。

映画の背景と制作

この映画は、『ゴジラ』と共通の製作陣によって制作され、雪男という新たなキャラクターを創造するために制作されました。雪男は、ただの凶暴な怪獣ではなく、喜怒哀楽の感情を持つ悲しい存在として描かれ、滅びゆく宿命を背負った種族の悲哀がテーマとなっています。この映画では、「悪」の存在として人間の冷酷さも表現されています。

特撮技術においては、都市破壊の描写はないものの、マット画を多用し雪山の神秘性を強調しつつ、人間と雪男との対比が作り出されています。映画は、アサ芸プラスのインタビューによると、当時話題となっていたヒマラヤの雪男に関連して制作されたとのことです。

あらすじ

物語は、雨が降り続くある日、かつて日本アルプスで遭遇した怪事件を語る登山部の会話から始まります。登山部が冬の山に挑もうとした際に雪崩に巻き込まれた結果、1人の部員が死亡し、もう1人が行方不明となる事件が発生します。山小屋には未知の生物の獣毛と足跡が残されていました。翌年、再び日本アルプスを訪れた登山部は、雪男と行方不明になった部員を探し続けます。

物語が進むにつれ、動物ブローカーの大場が雪男を捕まえようとする一方で、登山部の飯島が彼に襲われたり、地元の村の少女チカとの関わりが深まります。チカは飯島に恋心を抱き、雪男の住処を大場に漏らしてしまいます。最終的に、雪男は捕らえられ、その子供も非道な扱いを受けてしまうことになります。これに怒った雪男は大場らを襲撃し、物語は悲劇的な結果を迎えます。

雪男のキャラクター

雪男は、北アルプスの奥地に住む人々と共存し、古代の人類と近い種族の生き残りとされています。彼は非常に力強く、知能も高いが、非道な人間に連れて行かれた子供を失ったことから、その怒りが爆発します。雪男の描写においては、特撮班の円谷英二がリアルさを追求し、観客にただ恐ろしさを強調するのではなく、感情のあるキャラクターとしての深みが持たせられています。

特撮技術と制作の苦労

映画の特撮表現は非常に精密で、様々な試行錯誤を経て完成しました。撮影は日本アルプスの白馬で行われ、登山部の指導を受けたスタッフがロケを進めました。雪男の巨大感を出すために、一部ではストップモーション撮影も行われています。円谷は、リアリティを強調するため、撮影中の様々な工夫を行い、それが視覚的な魅力を生み出しました。

音楽と評価

音楽は、佐藤勝が担当しており、彼の印象が薄いとされる中でも、映画の雰囲気を作り出す重要な要素となっています。公開当初から様々な苦労を経て完成したこの作品は、特撮映画というジャンルが多様化していく中で、その後の作品制作にも影響を与え続けました。

公開後の評価と派生作品

公開後、映画はアメリカでも『Half Human』というタイトルでリリースされ、国際的に評価されました。また、アメリカ版においては新たなシーンが追加され、原作の本編が一部削除された点も特筆すべきです。『獣人雪男』は特に日本の特撮映画において重要な作品として、その地位を確立しています。

この映画は、文明批判や人間の冷酷さといった深いテーマを持ちながら、特撮映画の魅力を存分に表現している作品であり、多くのファンに愛され続けています。

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